姫と別れ

怖い。ただその言葉しか出てこない。政庁は戦場になるかもしれないから、とクラウディオの言葉でアッシュフォード学園に避難していたエヴァニエルは震える己の身体を守るように掻き抱く。あの爆発の瞬間までリヴァルと共にいたが、彼はいま大切なミレイを探しに生徒会室を離れている。広い生徒会室にはエヴァニエルただ一人。1年前までは此処にミレイがいて、ルルーシュがいて、カレンがいて、スザクがいて、シャーリーがいて、リヴァルがいて、ニーナがいた。なのに、今は誰も居ない。まるで世界と切り離されたようは感覚に陥る。先ほどクラウディオを見かけたが、彼は軍務中。己の我侭で彼を独占することは出来ない。

「・・大丈夫、だよね」

まだ無事を確認していないデヴィッドとエドガーは。言い聞かせるようにそう唱えるも心細さと恐怖心は消えない。

「ユフィ・・アルフレッド・・バート・・・誰かっっ」

助けて助けて怖いの怖くてたまらないの。




シュン、と空気の抜ける音と共に扉が開く。ばっ、と振り返ると疲れ切った表情のクラウディオが立っていた。

「クラウ・・ディオ・・・」

おぼつかない足取りのクラウディオにエヴァニエルは涙を拭うことも忘れて駆け寄る。

「だ、大丈夫?怪我、してるの?」

心配そうにおろおろとクラウディオの身体を見やるエヴァニエルをぐい、と抱き寄せた。己の名を呼ぶ彼女の背に手を回し肩に顔を埋める。

「・・・・死んだよ」
「え?」
「デヴィッドとエドガーは死んだ」
「・・・う、そ・・・嘘だよね」
「事実です。2人とも黒の騎士団によって殺されました」
「だって、絶対に、戻るって・・・。私が願うなら、絶対に、戻るって・・・」

受け入れられないとクラウディオの腕の中から遠ざかるエヴァニエルを再び引き寄せ抱き締める。

「もう、俺たち2人しか居ない」