双子と白の騎士03

突然、エヴァたちのいる場所の近くから爆音が響いた。振動に驚き、体勢を崩すエヴァをスザクが支える。

「スザクくん!」
「特派のトレーラー!?」

立ち上がる黒煙を不安そうに見上げているとトレーラーが此方に向かって走ってきた。窓が開かれ、セシルが声を張りあげる。

「セシルさん、どうして」
「此処は危険よ。乗って下さい」
「純血派の内ゲバなんだよ。とっとと逃げよ、・・・あぁ、それと。釈放、残念でした!また付き合ってもらうよー」

セシルの後ろからロイドが顔を出す。どうやら彼らにはエヴァとユフィの身元がバレているようだ。でなければ、迎えになど来ないだろう。

「ユフィ、帰らなきゃ。これ以上面倒を起こしたらお姉さまも怒るわ」

隣に立つ片割れに声をかけるが何かを考えているのか返答は無い。

「ごめんユフィ、エヴァ、ここでお別れだ。僕は行かなきゃならない。ランスロットなら止められるはずだから!」

そう言って駆けて行くスザクの後姿が幼馴染と言っても過言では無いグラストンナイツの5人と被る。手を伸ばし引きとめようとするが、手は届かない。

己の手を眺める。この世で一番怖いことは――――


「ユーフェミアさま!?」

セシルの叫びにも似た声にはっ、と顔を上げると先ほどまで隣に居たユフィの後ろ姿が見えた。考える間もなく、足は走り出していた。後ろで自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

「ユ、フィ!!」

ユフィユフィと名を繰り返し、手を伸ばす。頼むから届いて。

「エヴァ!?」

スタジアムの入り口を少し入ったところで彼女に追いついた。強くない身体に鞭を打ったせいか、呼吸が上手く出来ない。
倒れこむエヴァニエルの身体をユーフェミアが支える。

あるナイトメアが何かを投げた。エヴァニエルは固く目を閉じ、ユーフェミアに抱きついた。だが、予想していた痛みは無く、恐る恐る眸を開けると、電磁シールドを展開したランスロットが2人を守っていた。
げほり、と咽るエヴァニエルの背を撫で、立ち上がる。

「双方共、剣を収めなさい!我が名において命じさせて頂きます。私はブリタニア第3皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです。此方は第4皇女、エヴァニエル・リ・ブリタニアです。この場は私たちが預かります、下がりなさい!」

ユーフェミアの名乗りにナイトメアが次々と非礼を詫びていく。背後から声がかかる。スザクがランスロットから降り、2人の下へと駆け寄り、頭を下げる。

「皇女殿下。知らぬこととは言え、失礼しました」
「スザク・・・貴方が父を失ったように、私たちも兄、クロヴィスを失いました。これ以上皆が大切な人を失わなくて済むよう、力を貸して頂けますか?」
「はっ!勿体なきお言葉!」

スザクは膝を折り、ブリタニア式の礼を取る。ユーフェミアの腕を借りて立ち上がったエヴァニエルはスザクに声をかける。

「二度も助けて頂き、ありがとうございました。私も、戦争の無い世界を、作りたいです。だから、貴方も手伝ってください」
「はっ!!」