双子と白の騎士04

部屋に戻ったエヴァニエルの下に通信が入る。誰だろう、と思い通信を繋げると、幼馴染の1人が映りこんだ。

「バート!!」
『夜分遅くに失礼します、姫さま』

モニターに映るのはバート1人のみ。だが、僅かに声が聞こえるので近くには居るのだろう。

『エリア11は如何ですか?』
「まだ来たばかりなので、分からないです」
『嘘はいけませんよ、姫さま。政庁の窓から飛び降り、脱走したことくらい我々の耳にも届いています』

綺麗なほど笑顔のバートにエヴァニエルは通信を切りたい衝動に駆られた。が、通信は切らないで下さい、というバートの声に断念せざるを得なかった。

『全く何という無茶をなさるんですか。下手をしたら死んでいたかもしれないのですよ』
「でも、生きてる」
『結果論を仰らないで下さい』
「・・・・・・」 
『何か言うことは?』
「ごめんなさい」

宜しい、とバートの溜息交じりの声に上目遣いにモニターを見る。

「誰から、聞いたの?」
『父上がご連絡下さいました』

将軍、酷い。心の底で姉の忠臣であるダールトンを少しばかり恨んだ。だが、走ったことや、ナイトメアの前に飛び出したことは聞かされていないらしい。そのことに少しばかり安堵した。

『エヴァニエルさま』

新しい声が飛び込んできた。語尾にハートマークが付きそうな語調。座っているバートの後ろにデヴィッドが現れた。嫌な予感がする。デヴィッドは語尾にハートマークが付くような喋り方はしない。

『走った上に、ナイトメアの前に生身で飛び出したらしいですね』
『は?』
「・・・・・私疲れたので、そろそろ『逃がしませんよ、姫さま』

その後、詳細を聞いたバートとデヴィッドに懇々と説教を受けた。僅かにクスクスという笑い声が聞こえる辺り、他の3人がこの様子を見て笑っているのであろう。

『いいですか?今後このような無茶をなさるのなら父上にお願いして姫さまの外出を禁じてもらいますよ』
「もう、しません」
『約束だからな?』
「イエス、ユア、ハイネス」
『ふざけない』
「・・・・・」

敬語は使用しているが、グラストンナイツの物言いには容赦がない。皇族であるエヴァニエルに対して、言いたい放題である。エヴァニエルとグラストンナイツの関係は10年も前からも続いていた。身体が弱く、話相手もいなかったエヴァニエルを案じてコーネリアがダールトンの養子である彼らをエヴァニエルの話し相手として差し向けたのが始まりだった。女ではなく男だったことから護衛の任も請け負っていたことが伺える。その関係は今でも続いている。今では他人の目が無いところならば、軽口すら言い合う仲である。

姫さまを余り苛めるとコーネリアさまに怒られるぜ、とアルフレッドが乱入してきた。

『姫さまも流石に反省してるだろうし、その辺にしてやれよ』
『・・・二度としませんよね?』
 
こくこく、と頷くエヴァニエルに諦めたように溜息を吐くバートとデヴィッド。説教が終わったのを見計らったように傍観していたクラウディオとエドガーも乱入してくる。そして、そのまま6人でモニター越しの会話を楽しみ、翌日、エヴァニエルはコーネリアに、5人はダールトンに叱られる羽目にあった。