双子と総督

ごほり、と咳を零す。闇から引き上げられるように瞳を開けると再び闇が広がっていた。熱で浮かされ、ボーっとした頭で現状を思い出す。

そうだ。久しぶりの外出にはしゃぎすぎて、帰ってから熱を出してしまったのだ。またみんなに怒られてしまう、なんて考えていると、一筋の光が暗い部屋に差し込む。重い身体を起こし、光の方を見やると、コーネリアとユーフェミアの姿があった。

「あら、エヴァニエル。まだ起きてはいけません」

起き上がっているエヴァニエルに気づいたユーフェミアが駆け寄り、エヴァニエルの身体を再びベッドの中へと戻す。ユーフェミアの後ろからやってきたコーネリアの手にはタライ。エヴァニエルのベッドの脇にタライを置くと、タオルを濡らし、エヴァニエルの額へと当てる。

「全く風邪が治ったと思ったのにまたぶり返してどうする」
「ごほ、ごめ、んなさい」
「いや、私もお前の異変に気づいてやれなくてすまなかった」
「私が悪いの。お姉さま、は、悪くない、の」

額にかかった前髪を掻き揚げてくれるコーネリアの手の冷たさが気持ちよく、目を瞑り、彼女の手を感じる。

「また熱が上がってるな」
「コーネリアお姉さま、お医者さまは呼んだ方が良いのでは?」 
「風邪なら呼ぶところだが、恐らく疲労からくる熱だろうから必要は無い。明日になっても熱が下がらないのなら呼ぶがな」

乱れた布団を直すユーフェミアがコーネリアの呟きに心配そうに問いかける。ベッドの脇の椅子に腰掛けるコーネリアとその足元に膝を着けエヴァニエルの様子を心配そうに見るユーフェミア。ユーフェミアは片割れの熱の篭った手を両手で握る。エヴァニエルが怖がらないように。

「今日はずっと看病してあげますからね、エヴァ」
「明日に、支障が、ごほ、出ちゃう」
「構わん。流石に寝室にグラストンナイツを入れるわけには行かないからな」
「おね、さままで」

休め、というようにコーネリアはエヴァニエルの目元を手で覆う。その言葉に甘えるようにエヴァニエルは眠りへと付いた。