「とりあえず、助けたほうがいいんだよな」
「当たり前だろっ」
声を荒げる将臣の後ろを軽い足取りで走る***。2人の後ろからは望美と他の八葉が追いかけてきている。そして、2人の向かう先には落ち武者であろう人間たちに絡まれている尼僧と幼児。身なりから2人がそれなりの身分にあることが伺いしれる。
「将臣…」
「あ、なんだ?」
「今気付いた。空蝉したほうが早いって」
言い終わると同時に***の姿はパチンッと消え、助けに向かっていた2人を守るように立っていた。因みに既に戦闘は開始されていて、***の足元には恐らく***の蹴りを喰らったであろう人間が数人倒れている。
将臣と望美たちが追いついたときには既に立っている人間は***と尼御前、帝の3人だけだった。尼御前は***に支えられており、帝は将臣に抱きついた。
「何でこんなトコにいるんだ?」
「将臣と***が心配で着いてきたんじゃ」
「護衛もつけずにか?」
「…」
「全く重衡か経正に言えば簡単についてきてくれるし、あいつらは強い。二度とこんなことはするんじゃねぇぞ」
「……わかった」
項垂れる帝の頭をポンポン、と軽く叩くと将臣は帝を肩車する。ぱぁぁ、と顔を明るくさせる帝に将臣もまた険しい顔を一変し、笑顔を見せる。将臣は望美たちに此処で別れることを告げる。勿論、事情の知らない望美たちから不満が漏れる。それを苦笑しながらも宥める将臣。***はというと、尼御前と将臣の肩から降りた帝を連れ、先に歩き出していた。
そのときだ。味気ない、しかし、それでいて殺気ととれるモノを感じたのは。バッ、と振り返ると将臣の右腕に矢が突き刺さっている。矢が飛んできたであろう方向を見ると、地に伏している人間たちの仲間であろう人間たちがうじゃうじゃ、と湧いてきた。***は咄嗟の判断で帝と尼御前の腕を掴み、雪見御所へ空蝉した。
「***どのっ!!」
「戻ります」
それだけを言い捨てると***は再び空蝉した。
ひゅん、という音ともに望美に刀を振り上げていた人間が崩れ落ちる。***がナイフを投げたのだ。***は望美に何の言葉も掛けずに望美の背後で戦っていた将臣に向かっていった。
「怪我しているのだからさっさと退け」
「そう言える状況かよ」
「そう言える状況にしてやる」
にやり、と笑うと同時に***の周りに何本ものナイフが宙に浮く。はぁ、と将臣が溜息を吐くと共に後方に下がるのを確認した***はふふふ、と笑み、常套句を紡いだ。
「例え相手が人類最強であろうとも、僕の名前は***。僕の前では悪魔だって串刺し刑、正々堂々手段を選ばず真っ向からバラバラ死体にしてさしあげます」