もしもまた巡り逢えたならば、抱き締めたまま離さないから

ダラララララという音と共に前線の兵士たちがバタバタと倒れていく。

「な、なに?」
「ちっ、平家の人間だ」
「怨霊ですか?」
「いや、違う。人間だ」

ごきり、という人間の骨の折れる音ではっ、と九郎と話していた顔を音の方向へ向ける。そこには、違う運命で会ったことのある人間がにっこりと笑っていた。

「***さん・・・」
「おや、僕は君と会ったことがあったかい?僕の記憶に君は居ないんだけど。不思議だねぇ」

にこにこ、と無邪気に笑う***の手には笑顔とは不釣合いなモノが握られていた。右手には血糊がべったり付いた鉈、左手には大型のマシンガン。

「まぁ、いいや。その格好、君が源氏の神子…だね」

***は不敵に笑うと鉈を一閃させた。その一閃を辛うじて避けたものの、次々と繰り出される攻撃に望美は防戦一方だ。八葉たちも望美を助けようとするものの、阻止するかのように次々と襲い掛かってくる平家の兵士たちに足止めを喰らっている。

「遊びはこれで終わりだ」


***が鉈を振り上げる。望美は腕を交差させる。

「***さんっっ」

鉈は望美の脳天を割ることもなく、力無く降ろされた。恐る恐る***を見やると呆然とただ立っていた。

「……一姫?」
「…***、さん?」

鉈とマシンガンをぼとり、と手から落とした***は幽鬼のような足取りで望美に近づく。ぎりっ、と譲が弓矢を引くが、それを白龍が止める。

「白龍!?」
「今の彼女は無力。今の彼女に神子は彼女の知る人間に見えている」

***は望美の頬を両手で包み込み、慈愛の瞳で見つめる。

「一姫、僕はお前を恨んだよ。何で子荻と玉藻を殺した、と。でも、それだけお前にとって遊馬先生は大切な人だったんだな」

***の手が望美の頬を愛しそうに撫でる。望美もまた***の好きなようにさせている。

「でも、お前も死んだ。全くなんで匂宮に手を出すんだよ。殺し名序列第一位『匂宮』、しかも匂宮の最大の欠陥製品、戦闘能力だけなら赤色と同等の『人喰い』に。僕でも遠慮する相手に。何で、何で、何で、何でだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

それは絶望の悲鳴。先輩から可愛い後輩への懺悔。守りたいモノを守れなかった『ただの』人間の慟哭。