遠い街に想いを馳せて

「やぁ、お嬢さん。私の妹にならないかい?」

がしり、と敦盛の手を両手で握り締め、敦盛を見つめる***。敦盛の兄で***とは実質的夫婦である経正はびしり、と固まり、重衡もまた目を丸くし、酒を口に含んでいた将臣はごほっ、と咽た。***の突発的な行動に敦盛は顔を真っ赤にしながらしどろもどろになりながら兄に対して助けてくれ、と目で訴えている。知盛だけがくつり、と笑った。

「おまっ、いきなり何を言い出すんだよ」
「いや、どんな反応するかと実験を」
「するな!!」

将臣に怒鳴られながらも、からり、と笑い敦盛に対してごめん、と謝る***に敦盛も顔の熱が引かないままいえ、と返事をする。そのまま***は少し離れたところに座っていた経正の隣に座りこてん、と経正に寄りかかる。

「びっくりしたぜ、本気で」
「ふふ、珍しい顔が見れて僕的には良かったよ。でも、いいじゃないか、敦盛は」
「どうしてですか?」
「だって、僕なんて道端でばったり会った初対面の人間(♂)に、同じことされたんだよ」

***の発言で再びびしり、と固まる。今度は知盛も。***は何故みんなが固まった理由が分からずにえっえっ、とキョロキョロする。

「何もされてないですよね?」

両肩を目の据わった経正に掴まれ問われる。

「う、うん。その時は逃げたけど…」
「『けど』!?『けど』のあとは?」
「兄弟になった」
「「「「「はっ!?」」」」」
「その男、零崎一賊の長兄だったんだよ。超が付くほどの変態でさ、『スカートの下にスパッツを履くのは邪道だ』と豪語する人間。そのあと迎えに来たのは違う人間だったけど。もしアイツが迎えに来てたら絶対に僕は零崎にならなかったよ」

呆れたように笑いながらもその表情は幸せそうで懐かしそうで泣きそうだった。