こんな人間が君を愛することを許して欲しい

アヴァロンに帰還したスザクはトリスタンがまだ戻ってきていないことに気付いた。一緒にいたはずのアーニャは既に帰還し、いつもどおり携帯を弄っている。

「アーニャ、ジノは?」
「名前を追いかけた」
「名前を?どういう意味だい?」

そこへトリスタンがやっと戻ってきた。無事に収まるべき場所に収まったトリスタンのコックピットが勢いよく開けられ、ハーゲンを使用せずに飛び降りた。

「医者!医者を呼べ!!!!」

飄々としたジノらしくない言葉はジノの腕の中で死んだようにだらり、と腕を垂らす名前を見た瞬間に説明は要らなかった。大股で医務室へと歩き出すジノの顔は自分がユーフェミアをあの行政特区日本から助け出したときと同じだった。



ジノは治療が終わった名前の枕元に腰掛けていた。先ほど医師から聞かされた言葉がぐるぐると頭の中で回る。

「皇女殿下のお怪我は命に別状はありませんが、右目の傷は一生残るでしょう。そして、傷は皇女殿下の眼球も傷つけているので、視力も失われています」

彼女の白い髪と同色の包帯が右目を覆っている。それが痛々しくてならない。あの時無理矢理にでも連れて行けば彼女が傷を負うことは無かったのに・・。悔やんでも悔やみきれない。うっ、という呻き声と共に名前の瞳が薄く開けられる。

「名前!!」
「…ジノ?」

無事な左目がジノを映し出し、安心したように微笑む。名前の微笑みを見て、ジノも安心したように彼女の顔にかかる髪を掻き揚げる。

「気分は?」
「ぼーっとしている」
「まだ麻酔が効いてるんだな。……名前、言わなきゃいけないことがある」
「…ナナリーのこと?」
「違う。ナナリー総督はスザクが無事に助け出したよ。お前の怪我のことだ。右目はもう…無理らしい。傷跡も残るらしい」

名前は取り乱すでもなく、じっと天井を見る。数拍置いたあとに名前が零した。

「婚約解消しようか…。顔に傷のある妻なんて嫌でしょう?」
「っ馬鹿なこと言うな!!!! 俺はお前が良いんだよ!お前じゃなきゃ無理なんだ…」

泣きそうな声で怒鳴るジノに名前は目を瞠る。ベッドに横たわる自分を強い力で抱きしめるジノの背中に腕を回す。

「頼むからそんなこと言わないでくれ…」
「ごめっ、なさい……」
「名前じゃなきゃ俺は結婚しない。お前だけなんだよ…」