世界から隔離する接吻

ゼロがルルーシュであるというニュースが駆け巡ってからそう時間も経たないうちに名前の姿が消えた。それまで愛らしい笑顔を振り撒いていた名前が彼女の婚約者の傍から忽然と消えた。誰かによって攫われたのかと思われ、捜索も行われたが彼女の足取りは一向に掴めず、ジノは悲痛の底に陥っていた。そんなとき、98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアをその座から引き摺り下ろし、新たなる王がその地位に着いた人間がいた。それこそが、ゼロ。否、神聖ブリタニア帝国99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。そして、彼の横にはさも当たり前のような表情で立つ名前の姿があった。




「いいのかい、名前」
「何が・・・ですか?」
「その・・・ジノとのこと・・・」
「・・・スザクはどうして双子が生まれてくると思いますか?」
「え?」
「それは1人では持ちきれない運命の下に生まれてくるからです。1人では無理でも2人なら持てる。だから、私はルルーシュの傍にいるんです」
「名前・・・」

くすり、と笑う名前の髪に手を触れる。名前はそれを拒むでもなく、スザクのやりたいようにさせている。ブリタニア帝国の宮殿の限られた人間しか入ることの出来ない庭園で名前とスザクは束の間の休養を得ていた。お互いに分かっていた。この機会を逃せば、ゆっくりと話すことも出来なくなるであろうことを。

「名前、僕は・・・」
「ジノは、ルルーシュの隣に立った私を見てどう思ったんでしょうね・・」
「・・・」
「きっと嫌われちゃいましたね」

涙を流しながら無理に笑おうとする名前。スザクはそんな名前を見るに耐えられず抱き寄せる。

「スザク・・・」
「大丈夫だから。ジノが居ない間は僕が君を守るから」

涙に濡れる頬を両手で包みこむ。名前もまた乞うように涙で濡れた瞳を閉じた。