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待ち合わせがちょっと苦手。会った瞬間どんな顔したらいいか分からないから。最寄り駅つく時間連絡したら「おれもすぐ着くから一緒帰ろ」ってきて、なんか仕事で疲れてた心が浮かれたような気もしたけど気のせい気のせい。
改札出て近くの柱で適当にスマホいじって待つ。意味もなくブラウザを開いては目が滑って閉じるの繰り返し。「ついた」って連絡来て、ぎくっとしたけど視線はスマホに落としたまま。よく分からないプライドみたいなものが邪魔して、探すふりはしたくない。
別に私が探さなくても見つけてくれるし。言い聞かせて頑なに顔上げないでいると、いつもの気配。

「ごめんね待たせて」

やっぱりどんな顔したらいいか分からなくて、結局むっと口を引き結んで、意味もなく不機嫌そうな顔になってしまう。

「寒かった?」
「…ん、べつに」

今は何も答えたくなくて、適当に相槌うってそっぽ向く。だってなんか変な顔しそう。いや既に変な顔してる。

「は〜帰ろ帰ろ、疲れたわ〜」
「私の方が疲れた」
「今日珍しく遅かったもんね」

歩き出すと同時に手繋がれて、固くなっていた心が解きほぐされるような気持ち。なんでだろう。急に素直になれる気がして、その腕に絡むと微笑まれた気配がした。

「華金、嬉しいねェ」
「死語だよそれ」
「えっうそ!」
「これだからおじさんは」

でも確かにそうかもしれない。やけに高揚していつもよりくっつきたい気分だけど、これは華金のせいなのだ。そうなのだ。自分に言い訳が済んだ私は、絡んだ腕にぎゅっと力を込めた。


華金のせい


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