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正月というものがそんなに好きじゃない。ハッピーに染まらないといけない感じ、押し付けがましくて。イタリア人がみんな骨の髄まで陽気だと思ったら大間違いだ。なんて話をベルにしたら「ひねくれてんな」と興味がなさそうに返された。

「ま、分かるけど」
「ベルも日陰に生きるものだもんね!じゃなきゃヴァリアーになんていないもんね!」
「おい、てめーと一緒にすんな」

何か文句を言ってるベルは放っておきながら、窓の外を一瞥する。見えるのは鬱蒼とした森ばかりで、到底陽気にお祝いされるような土地ではない。それにほっとした。

「爆竹も花火もうるさいだけじゃん?ここは辺境の地でよかったー」
「まー、精々ルッスーリアがクラッカー鳴らすぐらいだろうな」
「ルッス姐がはしゃぐのは全然。許せる」

そのルッスーリアはキッチンにこもって正月料理を作っている。年越しまであと10分といったところだが、ギリギリまでこもってるつもりだろうか。手伝いにいったほうがいいのかな、なんて考えてるとドカドカとスクアーロが入ってきた。

「なんだ、揃ってんのはお前らだけか」
「あー、日付変わる前に帰ってこれたんだ」
「ルッスーリアが早く切り上げて来いってうるさかったんだよ。フランは?」
「寝てる」
「じゃあ呼んでこい。どうせルッスーリアの飯食うんだろ」
「えー?…ベル行ってよ」
「殺すぞ」
「いーからお前が行け」
「横暴だあ」

寝起きのフラン面倒だから嫌なんだよなあと思いつつ、スクアーロが「ボスに報告だけしてくる」と部屋を出ていく背中を見送る。
別に年越しなんて好きじゃないけどファミリーのみんなと過ごせるのは嫌いじゃなかった。今年もここで年越しか、と少し感慨深くなる。

「もう明けるぞ」
「…フラン呼ぶの後でいっか」
「いんじゃね」

チクタクと新年までの時間を刻む秒針を眺めてると、何の変哲もなく年が明けた。カウントダウンなんてする人もいないから当たり前なんだけど。ハッピーニューイヤー、とベルに告げようとしたその瞬間、ドガァンと地鳴りのような銃声が響いた。

「…ボスがキレたな」
「キレたね」

爆竹や花火の代わりに銃声が轟くここでの年越しが好きだなんて言ったら、きっと変な目で見られるんだろうな。ま、構わないけど。…そういえばレヴィはどこ行ったんだ。


物騒ニューイヤー


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