水面に映る自分と、どうしようもない現状に泣きたくなってくる。というかもうほぼ半泣きだ。長屋に戻って同室の友人を頼ろうかと思い始めた時、人の気配を感じて慌てて振り返る。
「どうかしたのか?」
「た、平滝夜叉丸先輩…!!」
面倒な人に会ってしまった、どうして今、という絶望が押し寄せてくる。滝夜叉丸先輩の自分語りに付き合っていられるような状態ではないのに。しかし、問いに答えないわけにもいかず、しどろもどろになりながら私は俯いた。
「か、髪の毛が、髪飾りに絡まってしまって…」
「…その様子だとかなり苦戦してるようだが、大丈夫か?」
「だいじょうぶでは…ないですね…」
強がり言っていられるほどの余裕もなく素直に吐けば、滝夜叉丸先輩がふむと頷いた。
「私が触ってもいいのなら手伝うが」
「えっ!?あ、えーっ……と」
「嫌ならタカ丸さんでも他のくのたまでも呼んでくるぞ」
思ったよりスマートな申し出に驚いてしまってしばらく言葉を失ったが、誰かを呼んでくる手間より手伝ってもらう方が申し訳なさが少なかったので私は大人しく頭を差し出した。
「お願いします…」
「よし。痛かったら言うんだぞ」
滝夜叉丸先輩の手つきは丁寧で、なんだか気恥ずかしい思いをしながらじっとする。あれだけ苦戦していたのが何だったのかと思うほど、滝夜叉丸先輩はあっという間に絡まりを解くと、軽く髪の毛を梳いて「よし」と呟いた。
「ありがとうございます…!!」
「気にするな。綺麗な髪なのだからあまり乱暴な扱いはしないことだ」
さらっと告げられた照れ臭い言葉と、自暴自棄になって髪を引っ張っていたことがバレていた羞恥心が一緒くたになって降りかかって、私は撃沈した。滝夜叉丸先輩って、滝夜叉丸先輩って…!!
絡まって滑り落ちて
prev │ main │ next