11月 皇帝ダリア
秋空に高々と咲き誇る花姿。
周囲の植物を見下ろすように直立するあなたは威風堂々。
だけどその一輪一輪は、優しく儚い。
冬の訪れを見守るように、その花は悠々と咲き誇っていた。
***
冬の訪れを感じるほどに寒くなってきた今日この頃。
水を触る仕事のわたしには、冷たい水はとってもこたえる。
あかぎれが出来始めるこの季節のわたしの手は、見るに耐えないほど痛々しい。
寝る前に念入りに保湿のクリームなんか塗ってみたところで、日中絶え間なくバケツを洗ったり花の手入れをしているうちに、そんな手入れも虚しく、あかぎれた所はパックリと深い溝を作ってしまう。
冬は本当に辛い季節。
だけどね。
今年の冬は今までと少し違う。
だって、わたし・・・
先月エルヴィンさんと両想いになったんだもの。
*
「ミーナ、仕事終わったか?」
閉店前、お店にひょっこりと顔を出したその人は、何を隠そうわたしの恋人、エルヴィンさん。
明日は、調査兵団は調整日だそうで、前日の今日は食事に誘ってくれるって約束してたものだから、こうして迎えに来てくれた。
エルヴィンさんとわたしは、先月のエルヴィンさんの誕生日に、ダリアの花束をプレゼントした日からお付き合いが始まった。
そして、わたしのちょっとしたキッカケで、プロポーズなんかされちゃったものだから、結婚を前提としたお付き合い。
あの日は、突然の展開に本当にびっくりしちゃった。
まさか、エルヴィンさんがブーケとブートニアのエピソードを知ってるなんて、思ってもなかったから。
だけど、わたしたち。
知り合って一年ほど経つけれど、店員とお客さんの関係だっただけで、お互いのことたいして何も知らなくて。
だからこれから、ゆっくりとお互いのこと知っていければいいな・・・ってことで、結婚するのは一年後の10月14日、エルヴィンさんの誕生日にしようって話になった。
だからそれまで、束の間の恋人期間を楽しめたらな。
でも一年なんて、あっという間に過ぎてしまうのだろうけど。
「エルヴィンさん!終わるの早かったんですね。
わたし、後明日の注文分の花束いくつか準備しておかなきゃいけなくて。
もう少し待っていてくれますか?」
「あぁ、いいよ。
急がなくていいから、納得のいくものを作るといい。」
閉店後はデートだ!と意気込んで早々に閉店準備をしていたのに、こんな日に限っていつもより次の日の予約が多くって、花の作成に随分と手間取ってしまっている。
早くお出掛けしたいのに・・・
でもそう焦れば焦るほど、なかなか素敵な花の組み合わせが思いつかなくて困ってしまう。
チラリとエルヴィンさんの方を盗み見ると、小さな観葉植物を眺めているそのお姿にドキッとする。
ただ立っているだけなのに、どうしてこんなにサマになるのだろう・・・
ううん、ダメダメ!
今は作成に集中しなきゃ!
そう気持ちを入れ直して、わたしはお花の作成に取り掛かった。
*
「ごめんなさい!随分と待たせちゃった!」
きっと早めに仕事を切り上げて来てくれたであろうエルヴィンさん。
なのに、結局お店で一時間以上待たせてしまった。
「いいや、大丈夫だよ。
それより、納得のいくものは作れたか?
小さな花束をいくつも作っていたが。」
「うん、そこは大丈夫!自信たっぷり。
明日、近くの教会で子供たちのお歌の発表会があるんですって。
さっきの花束は、その時に手渡す親御さんからのプレゼントだそうなの。
全部色違いなんだけど、みんなで揃って持ってくれたなら、きっと可愛らしいだろうな。」
そう話すと、ニコニコと柔らかい表情でわたしの話を聞いてくれるエルヴィンさん。
本当に胸がいっぱいになる。
「花束の主役はね、ガーベラにしたんだよ。
可愛らしいし、色も沢山あるから色違いにしやすいすいし、それと、」
「ミーナ、お喋りは後にしようか。
流石に私もそろそろ待ちくたびれたよ。」
調子に乗って話出そうとする私を優しく微笑みながら遮って、エルヴィンさんは私の頭を撫でる。
わぁ、いけない。
またついつい花のことに夢中になってしまってた。
そして・・・
その優しく触れる大きな手にドキリと心臓の音が大きく跳ねる。
「は、はい・・・、ごめんなさい。
わたしったら・・・」
触れられてる場所に熱が集まるのを感じながら、少し俯く。
お付き合いを始めたとはいえ、エルヴィンさんは毎日忙しくて、時々仕事のついでに通りかかる際にお店に顔を出してはくれるものの、こうしてゆっくり二人の時間を作るのは、実はお誕生日の日から初めて。
食事に行くのだって、あの雨の日の外仕事中に偶然出会った日以来。
なんだか突然“緊張”の文字が身体中を巡り、わたしを強張らせる。
すると、エルヴィンさんは、わたしの頭を撫でていた手をおでこに当てがい前髪を掻き分けると、チュッとその額に小さくキスを落とした。
「行こうか。」
そして、そう一言話すと、わたしの顔を覗き込んだ。
どうしてこんなに涼しい顔してるのだろう。
お店を閉めて、どこで食事をしようかと近くのお店の周りをうろうろしているわたしたち。
エルヴィンさんはわたしの手を取り、早過ぎない歩調で少し前をエスコートしながら歩いている。
嬉しさ反面、その慣れた仕草にチクリと胸が痛む。
結婚を前提にお付き合いと言ったって、わたし、エルヴィンさんのこと何も知らない。
普段、エルヴィンさんはどんな風に過ごしているのだろう。
仕事中どんな様子なんだろうかとか
仕事が終わった後のプライベートはどうしてるのだろうかとか
周りの人間関係のこととか
そして、今までの女性関係ってどうだったんだろうか
とか。
きっと、この慣れた様子から伺うと、決して経験が乏しい訳じゃないとは思う。
そんなこと確認のしようがないし、それを聞いたところで何か変わるわけでもない。
だけど、結婚するまでの一年の間に、そんなエルヴィンさんの奥さんに相応しい女性になんてなれるんだろうか、と不安になる。
と、そう考え事をしていたら、半歩前を歩いていたエルヴィンさんは足を止める。
そして、不思議そうな顔で問いかける。
「どうした?食事に乗り気じゃないか?」
そう問われてハッとする。
わたし、まだ何もかも始まったばかりなのに、何を考え込んでしまってるのだろう。
慌ててエルヴィンさんの言葉を否定する。
「違うっ、違うの!
その・・・なんて言うか、わたし緊張しちゃって・・・」
「緊張か・・・」
わたしの言葉にふわりと微笑む。
その仕草がまた余裕たっぷりで。
なんか、落ち込む。
「エルヴィンさんは、全然そんなことないでしょう?」
「いいや。」
笑いながらそれだけ言って、また前を向く。
ほら、余裕じゃん。
なんだかわたし、一人悶々としてるみたい。
外に並ぶメニューを吟味しながら、たどり着いた先は大衆食堂。
家庭的な料理がメインのこのお店は、子供連れの親子だったり、仕事の打ち上げをするおじさんたちだったり、様々なお客さんの層で賑わっていた。
「私は構わないが、こんなカジュアルな店でいいのか?」
そうエルヴィンさんは心配してくれたけど、お店の前の看板に掲げられた“じゃがいも祭り”の文字に惹かれて、ここがいいっ!と声を上げた。
普段よく食べるお芋さんだけど、“祭り”なんて書かれると、どんなに豊富なじゃがいもメニューが出てくるのか楽しみになる。
それに、前回行ったような高級なお店だと、今日は気持ちが萎えそうだったから、少し騒がしいくらいの店がいい。
店内のテーブル席に案内され席に着く。
テーブルには、小さなガラスコップを花瓶代わりに、外の街路樹のアベリアの花が可愛らしく摘み取られて生けられていた。
もう時季の終わるアベリアは、少ししょぼくれた感じがしたけれど、それがまた冬の訪れを感じさせてくれた。
花屋の商品として並ぶ花じゃなく、こういった外で摘んで来た花を飾るところに、店主のセンスの良さがチラリと垣間見える。
飲み物と食事の注文を軽く済ませると、わたしは飾ってあるアベリアの花を一つ摘まみ取った。
そして、その花をちょんとコップの水に付けては、エルヴィンさんの鼻の頭にくっつける。
「えへ、ピノキオエルヴィンさん。」
子供の頃に遊んだ花遊びを思い出しちゃったものだから、ついね。
「何してるんだ。」
呆れ顔で、でもちょっと照れたような顔で、エルヴィンさんは自分の鼻の頭に付けられたアベリアの花を摘まみ取る。
そして、そのままお返しだと、わたしの鼻の頭に付け返す。
不意に近付いたその大きな手にドキドキしながら、思わず目を瞑る。
すると、小さくデコピンをされて溜息。
「こんなところで、そんな、キスしたそうな顔をしないこと。」
「べ、べ、別に、そんなつもりじゃないんだからっ!」
「あぁ、わかってるよ。」
突然の発言に慌てて否定すると、余裕たっぷりの笑みで応えられる。
ほら、ね。
絶対慣れてるよ。
そして、こんなにドキドキしてるの、わたしだけなんじゃないかしら。
そう思うと、やっぱり落ち込む。
少し膨れっ面になっていると、飲み物とお料理が運ばれてくる。
美味しそうなそのお料理に目を奪われると、思わず顔がほころぶ。
「お疲れさま。」
そうエルヴィンさんが運ばれて来たビールジョッキを手渡すので、それを受け取ると、軽く乾杯をして食事にありついた。
“じゃがいも祭り”と歌うだけあって、美味しそうなじゃがいも料理がズラリ。
スープにサラダ、煮込んだものから揚げたものまで。
どれも違う味付けに仕上げられていたので、飽きることなくお腹いっぱい平らげた。
「もう食べられない!」
「それだけ食べたら十分だろう?」
そう言って、楽しそうに笑うエルヴィンさんはとても優しくて。
その表情に、私の心臓が再び跳ねた。
食事が終わり、会計を済ませようと店の入り口へ向かう。
その時、会計カウンターの後ろ側に薄桃色の可憐な花が咲き誇った大きな枝が目に留まり、思わず声を上げる。
「わぁ、素敵なお花!!
わたし、このお花初めて見たわっ!!」
「君でも知らない花なんてあるのか?」
「もちろん!だって花屋に並ぶ花なんてたかが知れてるし、」
そこまで話すと、会計カウンターにやってきた店主が嬉しそうに言う。
「これは、向かいの通りの花屋のミーナさんじゃないかい。」
「あ、こんばんは!
わぁ、おじさん、このお店のご主人だったんですね。」
少しぽっちゃりとした店主のおじさんは、時々わたしのお店にも顔を出してくれる常連さん。
いつも草花系のお花を好んで買って帰られるのを思い出し、このお店のセンスの光るさりげないお花の飾りに、なるほどと納得がいく。
「ミーナさんでも知らない花、あるんだね。」
「そんなっ、わたしなんてまだまだヒヨッコです。
市場に出回るような花は詳しく調べてますが、外に咲いてる花なんて、後どのくらい覚えれば良いのかわからないくらい沢山あるでしょう?」
「確かにそうだね。」
にこやかに同調してくれるおじさんは、年の功なのか余裕たっぷりで、きっと沢山の知識を備えてるんだろうなと思わされる。
「ねぇ、おじさん。
その花、なんて言うの?ダリアに似てるけど・・・」
「さあね、私も知らないんだよ。
毎年ジャガイモ畑の近くに高々と咲くから、今日摘んできたのさ。」
「素敵・・・そのうち観に行ってもいいかしら。」
「あぁ、いいとも。
でもいつも花の時期は長くないと思うから、行くなら早めにね。」
そう会話を弾ませた後、会計を済ませてお店を出た。
*
「エルヴィンさん、ご馳走になっちゃったけど・・・」
「あぁ、構わないよ。」
わたしが店主のおじさんと話し込んでるうちに、いつの間にか会計を済ませてくれたエルヴィンさん。
おじさんとの話に夢中になってしまって、エルヴィンさんの気遣いに気付かなかったことに申し訳なくて、やっぱり落ち込む。
なんだか・・・
今日は落ち込んでばかり。
「ミーナ、明日も朝早くから仕事だろう?」
「えっ。う、うん・・・」
「なら、今日はここで。」
いつの間にか着いていたわたしの家の前。
落ち込んでいる間に時間が過ぎてたみたい。
やだ・・・
もっと、エルヴィンさんとお話したいと思っていたのに。
「おやすみ、早く寝るんだよ。」
繋いでいた手を離して満面の笑みでそう言われると、返す言葉がない。
「うん、おやすみなさい・・・」
前回と違って食事だけでは物足りなく感じるのは、きっとこの距離感のせい。
もっと一緒にいたい
もっと近くにいたい
そう思ってしまうのは、わたしのワガママ?
ねぇ、エルヴィンさんは、そう感じてはいないのかな?
「ミーナ、店の休みは木曜だったか?」
ふと、思い出したかのように問いかけるエルヴィンさん。
「え?うん、お店の休みは木曜日だよ。」
「じゃあ、次の木曜は私も休みを取るから、どこか出掛けよう。
朝、ここに迎えに来るよ。」
そう言うと、お決まりのようにその大きな手でわたしの頭を撫で、頬に軽くキスをすると足早に帰って行った。
エルヴィンさんと別れた後、部屋に入って溜息を吐く。
折角のデートだったのに、わたし、何話してたっけ?
結局、いつもと同じでお花の話ばかりだった気がする。
わたしが話してばかりで、エルヴィンさんはそんなわたしの話に優しく相槌を打っているばかりで。
そんな調子じゃ、いつまで経ってもエルヴィンさんのこと、知りようがないじゃない。
そう自己嫌悪に陥り
そしてやっぱり、落ち込む。
食事が終わって、早々に解散になってしまったのも、そんなわたしに愛想を尽かしてしまったからだろうか・・・
考えれば考えるほど、悪い方に思考は巡り、気持ちは萎えるばかり。
そうやって、大きな溜息とともに、今日のわたしの一日は終わりを告げた。
それからは、木曜が待ち遠しくて。
今度こそは、聞き役に徹してエルヴィンさんのことを色々知らなくっちゃ!
そう言い聞かせながら、毎日首を長くして木曜になるのを待ちわびた。
*
やっとやってきた木曜日。
エルヴィンさんは、もうすぐお昼になりそうな朝の遅い時間に、わたしを迎えに家までやってきた。
早く会いたくて、早起きして、準備も早々に済ませて・・・
今か今かと何度も窓の外を確認していたわたしにとって、遅かったよぉ!と文句のひとつでも言ってしまいそうな状況だったけど、エルヴィンさんの顔を見てしまうと、そんな文句も吹っ飛んじゃう。
「おはよう、ミーナ。
朝はゆっくりしたかい?」
そんな言葉を掛けられ、きっとわたしを休ませるために、わざと少し遅い時間に来てくれたんじゃないかしら?と思ってしまうわたしは、いよいよ恋の病の末期かしら。
「おはよう。ゆっくりして待ってたよ。」
それだけ言うと、もうなんだか色々堪らなくなって、エルヴィンさんの胸の中に飛び込む。
ぎゅっと抱き着くと、優しく抱き締め返してくれるその大きい腕は、やっぱり温かくて。
本当に、わたしたち、両想いでいいんだよね?
そんな戸惑いと安心感が複雑に入り混じる。
「ミーナ・・・」
しばらくすると、戸惑い混じりのエルヴィンさんの声が頭上から聞こえてきて、思わず顔を上げる。
「会って早々嬉しいんだが、今日は少し出掛けたい場所があるんだ。
付いて来てくれるかい?」
そう言って微笑んだエルヴィンさんは、いつものようにわたしの頭をひと撫でした。
エルヴィンさんの馬に乗ってお出掛け。
後ろに乗せてもらうと、その近付いた距離感にドキドキする。
そして、嬉しくて、どさくさに紛れてその大きな背中にギュッと抱きついてみる。
心地良いエルヴィンさんの香りが、わたしの胸をいっぱいにする。
「ミーナ、ほら。」
しばらく馬を走らせたところで、目を瞑って幸せな気分に浸っていたわたしに、エルヴィンさんは声を掛ける。
言われたその先に目をやると、先日の食堂で見た可憐なお花が沢山咲き乱れていた。
高さ5メートルはあるところに、悠々と咲いてる薄桃色のお花。
「“皇帝ダリア”って言うそうだよ。」
エルヴィンさんの口から出てきた言葉に目を見張る。
「どうして、知ってるの・・・?」
「君にも知らない花があると知ってね、あの後必死になって調べたんだ。」
少し照れたような表情のエルヴィンさん。
わたしのために・・・
そう思うと胸がいっぱいになるけれど、花の図鑑を必死になって読み漁っているエルヴィンさんの姿を想像すると、なんだか可笑しくなる。
「このダリアはね、高いものだと5メートル以上もの高さの、人間の身長をゆうに超えてしまうかなり背の高い花だそうだ。
空にそびえ立つような貫禄のある姿に圧倒させられることから、『皇帝』という名前がつけられた・・・と書いてあったよ。」
わたしを馬から降ろし、近くの木に馬を繋げると、わたしたちはその悠々と咲き誇る“皇帝ダリア”の足元に歩み寄った。
「なのに、花は優しく可憐な一重咲きの花だから、花言葉にはかわいらしい『乙女の純潔・乙女の真心』というのが付いているそうだ。
この間、一度見て見たいと言っていただろう?気に入ったかい?」
「素敵・・・
けど、名前のわからない花を調べるのって、大変だったでしょう?
しかも、エルヴィンさん、忙しいのに・・・」
「ああ、確かに大変だったね。
若干ハンジにも手伝って貰ったよ。
だが、君の興味を引くために、君に知らない花のことを教えてみたくなってね。」
「そこまでして、どうして・・・」
「些細なことだがな、私だってやきもち焼くんだよ。」
小さな溜息混じりに呟くエルヴィンさんは、どこか少し物寂しげで。
そんな表情、見たことなくてとても目が離せない。
「いつも君は花に夢中だろ。
私のことなんて、二の次なのかな、と思うとね、」
「そ、そんなことないっ!
エルヴィンさんこそ・・・いつも余裕たっぷりで。
私こそ釣り合わないんじゃ、と思って・・・」
「この歳で余裕ないのは格好悪いだろ?」
「・・・」
「余裕ぶってるんだよ。
そのくらい、許して欲しい。」
そんなの、反則。
だっていつも、わたしばかりがヤキモキしてるのかと思ってた。
こんな、素敵なサプライズと一緒に心の内を打ち明けてくれるなんて、ときめかない訳がないじゃない・・・
「・・・・・・すき」
「ん?」
「エルヴィンさん、好き・・・大好き。
わたしだけドキドキしてるのかと思ってた。」
「そんなことないよ。」
そう言ったエルヴィンさんは、わたしの頭を胸元へ抱き寄せる。
彼の胸の音に耳を傾けると、早く波打つ鼓動が鼓膜を揺すった。
なんだ、同じだったんだね・・・
「ミーナ、好きだよ。」
エルヴィンさんは、ぎゅっとわたしを抱き締めると、そう耳元で囁いた。
もっと、あなたのこと知りたい・・・
もっともっと、あなたに近付きたい。
ねぇ、エルヴィンさん。
やっぱり、ダリアはわたしたちを結んでくれる花みたい。
きっと一緒に暮らすお家の庭には、この大きな大きなダリアの花を植えて、皇帝の名にふさわしいような立派なお花が、きっとわたしたちを見守ってくれる・・・
そんな未来が待っていたらいいな。
だから・・・
これからも、どうぞよろしくね。
【11月 皇帝ダリア FIN】
花季 -hanagoyomi-