没まとめC〜E


C異界訪問のラスト付近で寝落ちた際の先生方の対応・没。



どうしても聞かなければならない当初の目的。確認事項。それがデュースの頭をよぎる。何故、今、この瞬間に浮かんできたのかは分からない。しかしぼんやりと発音も怪しくなる中、ぽつりぽつりと言葉を落とす。

「……かん、かんとくせ……、……」

続けられた言葉に残された二人がぴたりと動きを止めた。彼らがどんな顔をしているのかも知らず、デュースの瞼は緩やかに閉じられる。放たれた言葉を一拍遅れて理解した二人がハッと顔を上げた時には、その瞼はすでに落ち切っていた。

「……仔犬、待てやはり寝るな起きろ」
「待って、待って待って小鬼ちゃん、小鬼ちゃん待って本当に」

いつになく焦燥を露にする二人はデュースへと小声ながらも必死に呼びかける。しかし返答はない。まさか、そう思いクルーウェルは耳を澄ませる。聞こえてくるのは規則正しい呼吸音。そろりと様子を窺い、そして断言した。

「……、……、……完全に寝ている」
「Oh my gosh……!」
クルーウェルは額に右手を当て、サムは頭を抱えた。夜が更けていく。


2021.5.29.
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最初は寝かせておかずに起こそうとする予定だった。書いてからなんか違うな〜と思ったので、没。




D止めることが叶わなかった話



どうにも寝覚めがすっきりしなかった。寝不足とは違う、身体の重怠さ。それが慢性的に数日間続いている。
しかし寮内、学園の敷地内、どれを見回しても危機は感じられない。目立った喧噪も起きていないせいだろうか。うろつく異形も怪奇も見当たらず、むしろ普段よりも平穏さを感じるほどだ。
午前中の授業も終わり、ランチタイムに差し掛かる頃になっても落ち着くことはなく。むしろ悪化しているようだった。デュースは奇妙なざわつきから逃れることが出来ないでいる。
その張り詰めた空気を感じ取ったのだろう。グリムが耳をヘタらせ、デュースとは若干の距離を置いている。すれ違ったジャックもまた僅かに目を見張ると一つ隣のテーブルに腰を下ろした。人間よりも本能寄りであるがゆえに敏感らしい。

ふと、何かに導かれるようにデュースは顔を上げ、大食堂の一角に設置されているテレビ画面を見て──そして、絶句した。

『長きにわたり謎のベールに包まれていた遺跡。そこに眠るすべてが、今明かされようとしています! 今回は特別に生中継で全世界に配信!』

大画面に映し出された遺跡に見覚えがあったのだ。

(あ、ダメだ)

デュースは目を見開いた。背筋にゾッと走る悪寒。
魔道具にはめられた魔法石がきらめき、人間が踏み入っていく光景を愕然と見つめる。そして、唐突に理解した。ここ数日の間ずっと感じていた、妙なざわつきの大本を。

過去生において、この世界に生を受けたことは幾度もある。その中で凄惨な最期を遂げた一つ。最期を迎えたのがあの遺跡だったのだ。
このままでは取り返しのつかないことを引き起こされてしまうことを、デュースだけが知っていた。──なぜなら。

(過去の自分が、命を賭して封じたモンをっ、何で、今……!)

かつて、いつかどこかで生きた己が、その命と引き換えとする以外に封じる手段が無かったモノが眠っているのだから。
焦燥のままに立ち上がったデュースは瞬時にとある人物を探した。己の頼れる相手の中で、全世界に顔が利き、影響力をもたらすことが出来る人物。

「先輩、リ、リア先輩っドラコニア先輩っ」
「ん? どうした、デュ──」
「先輩止められませんか、いやです、あれ、止めさせてください。ダメです、ダメなんです開けちゃ」

呼びかけに応じる声すら遮ってデュースは捲し立てる。かつてないほど眉が寄せられたその顔色は悪い。この世の終わりを見たかのような表情がリリアの不安を煽る。マレウスは柳眉を僅かに寄せた。ダメだと言い募るデュースに再度何事かと問おうとした刹那。

「──あ、」

視線を大画面に釘付けにしたデュースは小さくため息のような一音を落とした。ひどくか細い声だった。全てを諦めたかのような、声だった。強張っていたデュースの肩から徐々にゆるりと力が抜けていく。

「もう、無理ですね。忘れてください」

大画面の向こうには、黒々とした虚から覗く不気味な双眸が爛々とギラついていた。


2021.6.6.
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「副題:人間って余計なことするよね」の予定だった。良くあるパターン。何か大事になりそうだし収集がつけられなくなりそうだし書くの疲れそうだから没にしよ〜ってお蔵入り。




E YES NINJA NO NINJA



振り向きもせず攻撃をいなし、デュースは相手の喉元にペン先を突き付けた。困った事に、このような襲撃は初めてではない。何とも血の気が非常に多い学園である。
その様を偶然とはいえ目撃していた者が居た。青いベストを着用した生徒。イグニハイドの生徒である。彼は内心で驚愕を顕わにした。いや無言のまま挙動不審になっていたため、少々表に出てしまっているが。

(──あれはまさか、極東に存在するというニンジャという存在では……!?)

当たらずとも遠からず。しかしデュースは忍者では無い。元審神者である。闇討ち暗殺お手の物! とまでは言わないが、戦闘慣れしていることは確かだった。
ディアソムニアの生徒たちに続き、更にちょっぴり事実とはズレた認識をされつつあるデュースであった。
……なお、イグニハイド生の中に、他者との交流を積極的に行う生徒は少ない。同じ寮生ならばその限りではないが。だがそれもごく限られている。故に勘違いが正されることは暫く、いや半永久的に望めない。さもありなん。


2021.6.18.
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ふと思い浮かんで書いていたは良いものの、結局使い道を見出せずに放置されていた一場面。多分このまま日の目を見ないだろうなと思ったので。