没まとめF〜H


F 支部で見た! 其の壱(魔法薬と角)



突然だが、デュースの頭に角が生えた。
……とは言えそれは鬼や妖等といった類のものではない。とある生徒が監督生に向けて魔法薬をぶん投げたのを目端に見止め、反射的に庇い、頭から薬を被ってしまった。その結果、角が生えてしまったというわけだ。
魔法で弾けばよかったな。そう思い到り深く項垂れたのはつい先ほどのことである。

「ごめんね、ごめんねデュース……」
「いや、気にしないで良い。……犯人はとりあえず絞めたし」
「……デュースってたまぁにそういうところあるよね……」
「そういうって、どういう?」

心の底から申し訳なさそうに歪んでいた顔から一変。監督生は何とも言えない表情を浮かべ、見慣れぬ角が生えた自身にとっての理解者を見上げる。その表情と視線の意味を掴みきれず、デュースは首を傾げるのだった。


2021.6.19
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お薬ひっかぶって何やかんや。冒頭というか導入部分。これは別のを採用したので自然と没になったやつ。




G 出られない部屋



条件を満たさなければ出られない部屋。まことしやかに囁かれている噂のようなものだ。──まさか実在するなどと、数分前のデュースとクルーウェルは思いもしなかった。いや、そう言っては多少語弊がある。もとより二人とも部屋の存在の可能性は否定していなかった。しかし、それが無差別に誰彼構わず引き込むものだと思いたくなかったのだ。自分たちが被害にあうとは思いもしなかった、ともいう。

(……こんなん、質の悪い怪異とほぼ存在定義が一緒じゃねぇかよ……)

げんなりとした様子で脱力したデュースの目からは光が若干失せていた。
開錠条件は【抱えている中で一番ひどいトラウマをカミングアウト】である。ふざけんな、と声を上げたくなるような条件。妙にポップな字体が余計に苛立ちを煽る。ジトリと目を据わらせたデュースの横で、クルーウェルもまた苦虫を噛み潰したような表情でポップな字体を睨みつけていた。
だが、考えようによってはまだマシな状況なのではないだろうか。何せ共に巻き込まれているのは互いにとって、ある種信頼のおける相手。良く知りもしない、もしくは敵愾心を抱いている相手と共にこの珍妙極まりない部屋に引き込まれたわけではない。無闇矢鱈と自身の弱みともなりかねない部分をさらけ出すことにならずに済んでいるのだから。


2021.6.19
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トラウマ云々は一度やってみたいと思うけど、何か夢見主くんよりも周りが可哀想な未来しか見えないので……。没。





H 召喚術モドキ


とある日、監督生が神妙な顔でこう切り出した。

「どうしようデュース、私、召喚術が使えるようになったのかもしれない」

魔力を持たない彼女が召喚術を行えるはずがない。それを覆す言葉。何が起きているのだ。デュースの背筋が自然と伸び、肩に力が入る。しかしそれも、次に彼女の口から飛び出た内容によって崩された。

「キノコの歌を歌うとね、いつの間にかジェイド先輩が近くに居るの」
「ごめんちょっと何言ってるのか分からん」

後に監督生は言う。デュースがスペキャ顔になった場面を初めて見た、と。
なお、この日の晩、夢にジェイドがキノコと共に出現した。悪夢である。


2021.7.4.
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一度は考えたことがあるのではないでしょうか。そうあの有名なキノコの歌。