転生したら、名探偵コナンの世界の住人になっていました。主要人物は遠くから眺めているだけで十分なんです! 裏切りのステージ@
「って言う事なんだけど、千束さんも一緒に行きましょうよ!…ね?いいでしょう」
ポアロのバイトにて、今日はヒロインである蘭ちゃんや園子ちゃんがコナン君を連れてお茶を飲みに来ていた。間近で見た2人の印象は、そりゃあもう美少女だった。
園子ちゃんは私が巻き込まれた事件を知り、励まそうと、今度行われる人気ミュージシャンのリハーサルに連れて行ってくれると誘ってくれたのだ。キラキラした目でずいずいと誘われては…断りずらい。
「ふふふ、行ってらっしゃい。千束ちゃん。せっかくなんだし」
と、梓さんまで…。
「でもシフt…」
「その日は半日で終わりでしょう?」
「あら、丁度良いじゃない!」
「…はい。それじゃあ、よろしくお願いします」
「あ、そうだ。それから千束さんの他にも、ファンの人か一人来るんだけど。沖矢昴さんって人。先に伝えておくわね」
(……!?、え、ちょっ。沖矢昴って…赤井秀一…)
「え、えぇ、わかったわ」
園子ちゃんから発せられた名前には、聞き覚えがあり過ぎて、一瞬心臓がドキッとした。それと同時に何か嫌な予感がした。
ミュージシャン、リハーサル、沖矢昴…。
この3つの他にも、何が重要な物を忘れている気がした。この回の話をアニメで見た事がある気がするのだが、断片的な記憶しか持っておらず、しかも既に参加する話になってしまっている。
どうしよう。
困ったなぁ。
これじゃあ対策が打ちづらい。
まぁ対策と言っても大した事は出来ないけれど。
「…千束姉ちゃん?どうかした?」
ここぞとばかりに鋭いコナン君。
「え、ううん?ミュージシャンのリハーサルなんて中々見れないから、楽しみだなぁーて」
…。やっぱり、私の様子がおかしいのバレているのかなって思ってしまう時がある。これは本当の事を言うべきだろうか。実は私は転生者なのだと。
「うん。僕も楽しみなんだ!」
いや、"彼"から問いかけられた時、その時に答えればいいだろう。でも、全ての事は話さない。私だって命が惜しい。もう、死にたくない。次はないかも知れないのだから…。
♦
「初めまして、沖矢昴と言います」
私の目の前にいる"沖矢昴"は、とっても普通な感じの人間だった。
「こんにちは、私は加藤千束と言います。今日は園子ちゃん達に誘われて、ご一緒させていただく事になりました」
「それじゃあメンバーも揃った事だし、早速行きましょう!」
リハーサルの見学出来る園子ちゃんはテンション高めにリハーサル会場へ着いたのだか、ここで一悶着が起こった。
「えぇぇぇぇ!!?リハーサルが見学出来ない!?マジで!!?」
マネージャーさんや関係者の方が説明してくれたのだが、…。とある雑誌記者の方が持ち込んだ話に、何だか不穏な空気が漂っている。不倫がどうのこうの…。
(この話…私達が聞いていい話なんだろうか)
と思っていると、雑誌記者が外に追い出された。
「じゃあ、うちらも帰ろっか」
呆気に取られていると、園子ちゃんが。
「そうだね、明日も学校だし」
「えっ!?帰っちゃうの…」
続いて蘭ちゃんが頷いた事に、コナン君が驚いた顔をしていた。…え、そこ驚く所なの?自然な流れだとは思うけれど…胸の中に、何ががつっかえてる気がした。
マネージャーさんも園子ちゃん達に同意するけれど、意外な事にあっさり引くだろうと思っていた沖矢さんが口を挟んだ。
「…、でも、最後なら最後のリハーサルを見たほうがいいのでは?」
(赤井さんて、本当に波土さんのファンだったんだ…)
それなら納得が行く。
ファンなら、リハーサルしている所を一目でも見ておきたいものね、と私は一人納得していた。しかも最後のリハーサルと来れば話は別だろう。きっと、何がなんでも見たいはずだ。
しかし…。
「でも、…昴さんには悪いですけど」
「アタシ達そんなファンじゃないから」
と、園子ちゃんと蘭ちゃんが申し訳なさそうに沖矢さんに伝えた。
「…、え?」
いや、うん。
沖矢さんの気持ちはよく分かる。
…ショックだよね。
「ではここに来ようと言い出したのは…?」
困惑した表情を浮かべる沖矢さん。
「僕ですよ」
一瞬、コナン君と沖矢さんの空気が、そこの周りだけピンッと張り詰めた。
沖矢さんの発した言葉に繋げるようにして答えたのは、今日仕事がお休みだった安室さんだった。
その後ろには梓さんもいて…。
(…え、あれ?梓さん…シフトは…?)
オーナーに早上がりさせてもらったのだろうか、その時の私は、呑気にそんな事を考えていた。
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