沖田総司side



それはいつもの朝食の席でのこと。

「……ごちそうさま」

香耶さんは珍しく、ご飯を少し残してお膳に箸を置いた。

「香耶さん、食欲無いの?」

「うぅ……酷いんだよ今日」

「何が」

「……腹痛」

「おなか痛いの? なんで?」

「うがーっ! みなまで言わすつもりかあんたは!! ほんとはわかってるんだろ!!」

「うん。月役なんだよね?」

「そうだよ!! なんなんだよこの羞恥プレイ! いだだだ!」

香耶さんはおなかを押さえて、床にこてんと横になった。

「う、産まれる……」

「何が!?」

「そんなにかよ!?」

「顔が真っ青だぜ、香耶」

普段と違う香耶さんの様子に、平助君たちも思いのほか容体が深刻そうだと気付いて声を上げた。
確かに、辛そう。男にはわからない辛さだよね。
うずくまる香耶さんに、見かねた土方さんも声をかける。

「おまえもう部屋に戻れ。そんなところで寝るんじゃねえ」

「副長のおっしゃる通りだ。ここで寝ては体を冷やす。山崎君に薬を出してもらうといい」

「うぃ」

「香耶さん、お薬は私が貰いに行きますから、無理しないで休んでいてください。あとで指圧もしときしょうね」

「ありがとう、千鶴ちゃん……みんなも」

香耶さんは力なくほほえんでゆっくり立ち上がり、おぼつかない足取りで広間を後にしたのだった。




朝の会議が終わったので、僕は香耶さんが寝ているだろう部屋に向かうことにした。
午前中のやわらかい陽の光が差し込む縁側。僕は、そこに香耶さんが寝転がっているのを見つけた。

「香耶さん?」

「んー……」

「行き斃れ?」

「んー」

行き斃れなんだ。
日の差す縁側は温かい。でも香耶さんの手の指先に触れてみると少し冷えてるような気がした。

「……そうだ。ちょっと待ってて」

僕は自分の部屋から座布団と掛布を出してきて、香耶さんが寝ている縁側にもどる。

「あ、枕?」

「うん。これもかけて」

彼女の身体を掛布でくるんで。
それから、僕も一緒に縁側に座る。

「身体を丸めて寝ると、少しは楽になるらしいよ」

「それ、なに情報?」

「松本先生。香耶さん、いつも隠してるけど毎月酷いみたいだし」

「うう…ありがと」

腰をさすってあげると、香耶さんは少しだけ表情をやわらげた。

「総司君、仕事は?」

「今日は非番だよ」

「そっか……」

ぽかぽかの陽気。
うとうとする香耶さんの髪を撫でて。
うん、いいな。
たまにはこんな休日も。

「総司君」

「うん、なに?」

「ずっとこうしていたいな……。総司君とずっと」

香耶さん……。

「……僕もだよ」

僕も今、同じことを思ったんだ。

「身体、大事にしてね。いつか僕の子供を産むんだから」

規則正しい寝息を立てはじめる香耶さん。
僕のほとんど本気の冗談も、もう香耶さんには聞こえなかっただろう。
心地いい微風が、僕達をさらりとなでて通りすぎていった。

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