拾壱-01

月神香耶side



突然だけど……気持ち悪い。


昼間、千のところに遊びに行った。
茶菓子をいただいておしゃべりしてたら、気付いたら夕方になっていた。歳三君には、夕餉には戻ると伝えてあったので、千の屋敷から早駕籠を飛ばして屯所に帰った。
そしたら見事に乗り物酔いして、せっかく千鶴ちゃんが作ってくれた夕餉も咽を通らないという始末。

はぁ。
今なんか口に入れたら絶対リバースする。まるで誰かに胃をわしづかみにされて、ぐにぐにされてるみたい。
いつもこっそり参加する目の前のご飯争奪戦が、いまは癇に障ってしょうがない。

膳にほとんど手をつけず箸を置いた私の顔を、右隣の総司君が心配顔で覗き込んできた。

「香耶さんどうしたの? 気分が悪い?」

そして左隣の一君も。

「大丈夫か? 顔色が良くないな」


なんて優しい子達。ちょっと涙が出そう。
でも私には喋る気力もなくて。口を押さえてうなずくことしかできなかった。

もう部屋に戻ろう。横になってればきっと治る。そう思ってふらふらのまま広間を出て行った。

誰かが何か言ってたような気がするけど無視。
休み休み、廊下を自室に向かって歩いていると、視界を覆う白いもやもや。身体の熱が引くような感覚。

やべ。立ってられない。貧血の症状じゃねえか。これ。

手を挙げるのも億劫で、廊下の隅にずるずると膝を付いて倒れこんだ。
うーん、屯所の廊下で斃死とはね。


──香耶さん!!


薄れゆく意識の中、大好きな手が私の身体を抱きとめたような気がした。

| pagelist |

ALICE+