02
沖田総司side
夕餉のとき。
いつもなら隣の一君と静かな攻防戦を繰り広げてる香耶さんが、今日は自分の膳にすら箸を付けられない様子だった。
「香耶さんどうしたの? 気分が悪い?」
尋ねてみると、香耶さんは口を押さえてこくりとうなずいた。
周りのみんなもさすがに異常だと気付いたみたいで、香耶さんを気遣う言葉をかけていたけど、当の本人はそれに答えるどころじゃないみたい。
ふらふらと立ち上がって、壁伝いに広間を出て行った。
……心配だな。
「な、なあ、香耶の奴こっちをみて殺気立ってたよな」
「気分が優れぬときにあんな暑苦しいものを見せられてはな……」
「ちょ…どういう意味だよ一君!」
「さらに悪化するでしょうね」
山南さんの放ったとどめに、平助君はがくりとうなだれた。
「それにしてもあいつ、拾い食いでもしたのか?」
「新八さんと一緒にしないでくれる?」
「お、おう…すまん総司」
香耶さんの名誉を守るためにも、僕は速攻で新八さんを睨んでおく。
ここで左之さんが気まずそうに口を開いた。
「……あのよ、総司」
と、なぜか土方さんのほうにちらりと視線をやって。
「おまえに思い当たることはねえのかよ?」
「僕に?」
「もしかしたら……あいつ、身ごもってるとか」
しーん……
からんからん。
沈黙の中で、千鶴ちゃんと平助君と新八さんの箸を落とす音だけが響いた。
「「「えええぇぇ!!!?」」」
「うるせえ!」
一同驚愕の絶叫を土方さんが一喝。
身ごもる……身ごもるってつまり……
「なんと……! 総司もとうとう父親か!!」
「近藤さん、まだ可能性の話だ」
「とにかく一刻も早く医者を手配しましょう」
「沖田さん、香耶さんを!」
千鶴ちゃんの声に我に返った僕は、うなずいて立ち上がる。
そして広間を飛び出した。
身に覚え? あるに決まってる。
どうしよう。心が浮き立つ。
だって、香耶さんに僕との子が出来たのだとしたら──
「香耶さん!!」
部屋の前で床に崩れ落ちる彼女の身体を、僕は必死に抱きとめた。
──このひとを、ずっと僕のそばに繋ぎとめることができるんだから。