03

月神香耶side



目が覚めると、総司君の部屋で寝かされていた。
まあ、恋仲だしね。不自然じゃない。

辺りは薄暗く、夕餉のときからそれほど時間は経っていないことがわかる。
布団から身体を起こすと、軽いめまいはするものの、体調は悪くなかった。

「うーん、おなか減った」

さっさと布団を整え、部屋のふすまを開けると。


「あ、香耶さ…」

「香耶さんっ!!」

外からふすまを開けようとしていた千鶴ちゃんを追い越して、総司君が私に飛びついてきた。

「香耶さん…香耶さん…っ」

「そーじ……くるし…」

「沖田さん、香耶さんが死んでしまいます!!」

千鶴ちゃん、縁起でもないこと言わないでよ……。

「!……ごめん、大丈夫?」

「う…うん。平気」

おかげで圧死は免れたけど…なんだろう。この過剰な反応は。総司君も千鶴ちゃんも、なんだか重病人を相手してるみたい。

「香耶さん、気分が悪くても少しでいいので食べてください」

言って、千鶴ちゃんは温めなおしたおかずとお粥の膳を差し出す。

「あ、わざわざありがとう。千鶴ちゃん」

「僕が食べさせてあげる」

「いやそれはいい」

いいって言ってるのに、総司君は膳を受け取って、私を室内に連れ戻した。


お茶を持って来ます、と部屋を去った千鶴ちゃん。
その彼女と入れ替わるようにやってきたのは、嬉しそうな顔した近藤さんと、しかめっ面の歳三君だった。

「え、え? 何が始まるの?」

私は布団の上で正座して姿勢を正した。

「香耶君、おめでとう!」

「へ?」

近藤さんは私の両肩にガシッと手を置いて、やたらガクガクしてくる。
それを止めたのは珍しく焦った顔した総司君で。

「近藤さんっ! そんなに揺すったら駄目ですよ」

「おお、そうだった! すまん香耶君、大丈夫かね」

「はぁ」

なんだろう。この喜びようは。私からは先ほどから間抜けな声しか出てこない。
とりあえず、黙ったままの歳三君に視線で助けを求めてみると。



「……妊娠したってのは本当か?」

………。



「はあ!?」

私は思わず総司君を振り返った。出来るとしたら相手は彼しかありえない……が。

「……私、妊娠したの?」

「違うの?」

「いや、ちょっと待って…」

そうか。だからこんな事態になってるのか。でもなんだってそんな話に……。

「少なくとも私は寝耳に水なんだけど」

「はぁ。やっぱりな」

私の言葉に歳三君は疲れたようなため息を落とした。
やっぱりって。違うと思ってたんならこのふたりを止めてくれよ。

「つまり、香耶さんはまだ自覚が無いってことなんだね」

「…総司君の中じゃ妊娠決定か。がっかりさせるようで悪いんだけど、出来てないと思うよ」

「いや、まずは医者に診せ、それから結論を出しても遅くはなかろう。子供の名前はどうする、トシ?」

「話し飛びすぎだろ近藤さん! 香耶、月のものは来てるんだろ」

「なんでそんなこと公開しなきゃなんないの。どんな辱めよ。前月ちゃんと来たとも(自棄)!」

「香耶さん、あんまり興奮しないで」

「あんたらがさせてんだよ!!!」

頭の血管がぷつりと逝ってしまった。
この後、誤解を解くのに半刻を要した。

| pagelist |

ALICE+