02

沖田総司side



翌朝。
障子を朝日が照らしている。
僕は、布団の中で香耶の身体をきつく抱きこんだまま、目を覚ました。

「………香耶」

返事は無い。

僕の手は、いつの間にか香耶の簪を握りしめていた。
香耶が、置いたんだろうか……。
その簪は布団の隅に置いておき、僕は身を起こす。


「香耶」

呼吸が、無い。
していない。
震える手で、彼女の無い脈を取る。


「香耶」

まだぬくもりの残る身体には、昨晩つけた口付けの痕が無数に残っていて。

「……香耶っ」

その、少し低い、綺麗な声も。

「香耶!」

深く澄んだ空色の瞳も。

「あ………あっ」

もう、二度と。

「…うぁ……ぁ」

僕は、その愛しい亡骸に、必死でしがみついて、言葉にならない声を上げるしかできなくて。

「ああああああ──!!」


香耶……
……どうして。


言ったよね。
子供産んで、たくさん家族をつくるって。

心配しないで。
僕が子どもを育てながら、働いて、香耶の看病もするから。
大丈夫。
僕は自分で言うのもなんだけど、要領がいいし、子ども好きだしね。


だから、君は、望むだけでいい。

僕のために、望んで。
もっと、わがままに、欲しがってよ。

ねえ、香耶。


しかし、抱きしめていたその亡骸は、もろく崩れて僕の腕の中からすり抜けていく。
さらさらと。
真っ白な砂になって。
彼女が宝物だと言ってくれた、鼈甲の簪だけが、そこに残ったまま。

「いやだ……いやだよ!!」

僕は、畳の上に散らばったその砂の上で、いつまでも啼き続けたのだった。

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