肆-01
月神香耶side
最近、総司君が何かを思いつめてることは知ってた。
それが私に関係することだっていうのも。
「ねえ、もうやめよう」
「……なにを?」
なんてね。
ほんとは、わかってる。
だって、総司君は、私に触れなくなったし。
彼の部屋に入れてくれなくなったし。
これ見よがしに花街に行くし。
千鶴ちゃんには笑いかけるのに、私には無視だし。
かと思えば、時々私のこと怖い顔でにらんでくるし。
……だめだめ、こんなんじゃ。わかってたんだから。
最後くらい、未練がましい女と呆れられたくないもの。
私はわざとらしくため息をついて肩をすくめてみせた。
「はぁ……理由を聞いてもいいかな」
「……めんどくさくなったんだよね。島原に好い子がいるし」
めんどくさいか。私、総司君に、花街なんか行くな、とか言ったこと無いんだけどな。まあでも、しょうがない。
「わかった」
言い終わらないうちに、私はくるりと背中を向ける。
だって、顔が泣きそうに歪むのを、止めることができなくて。
泣き顔を見せたくないと思うのは、ほんの少しの意趣返し。背中でなんでもない振りをして、彼が好きだと言ってくれた髪を揺らしながら、私はその場を立ち去った。
唇を噛み締めて滲んだ血の匂いに、頭が痛くなってくる。
血が飲みたいと思う自分に、自嘲の笑みを零した。
ああ、こんな化け物が、彼のそばにいちゃいけない。
これでよかったんだ。
総司君が、どんな表情でその場にたたずんでいたのかなんて、私に知るすべはなかった。
君と別れた半年前