05
六道骸side
闇の中。
「素晴らしい。実験は成功だ!」
忌々しいマフィアの声が聞こえた。
「特殊兵器の開発は地に堕ちたオレ達が再び栄光を取り戻すための礎だ」
愚かな。
「開発にたずさわり死ぬことは名誉なことだと思え」
マフィア風情が。
……だけど、そのとき。
「神にでもなったつもりか? 彼らは彼ら自身のもの。おまえらが好き勝手にどうこうしていいものじゃない」
清浄な声が耳を洗った。
「虚勢だな」
「そうでもないさ。おまえ達が大好きな弱肉強食の論理で言えば、少なくとも」
巻き上がる一陣の風。
僕は両の目をしっかりと見開いた。
「私はおまえらを潰していいということだろう?」
「戯言を」
「貴様の残りの右目もオレ達によこせ!」
香耶は笑った。
何もない空間に、闇の色をした炎が出現する。
彼女の意思に従い、それは彼女の右の手にまとわりついて、そして霧が晴れるように炎が霧散すると。
彼女の右手には、日本刀が握られていた。
桜の螺鈿が施された美しい日本刀。
空色だった瞳は真っ赤に染まり。銀髪は白髪に。
「なんだっ!? 化け物……っぎゃぁああぁあああ!!」
人間を斬り伏せ、人間の返り血に染まる彼女は。
「子供たちは隠れていなさい」
やはり、美しかった。
僕も六道を廻って手に入れたスキルで、エストラーネオの研究所を潰すのを手伝った。
香耶には叱られるかもしれないと覚悟していたけれど……彼女は僕を抱きしめてくれた。
「よくがんばったね」
きっと、この瞬間のためだったから。
「香耶。これからどうする?」
薫がたどたどしいイタリア語で尋ねた。
背後で燃える研究所。そして生き残った被験体の子供たちを見回し、香耶はほんの少し考えるそぶりを見せ、
「そうだ。復讐者に行こう」
ちょと散歩しに行こうみたいなノリで、とんでもないことを言い出した。
「出頭するんですか!?」
「違う違う。私これでも復讐者たちとは昔からの知り合いでさ。こんな悪徳マフィアを放っといてなにやってんだって文句言いに行く。ついでに討伐料と慰謝料を貰おう」
「……香耶、おまえあいかわらずちゃっかりしてるな」
どうやらずいぶんと生活力があるようだ。