07
月神香耶side
どうやら総司君は私のことが嫌いなようだ。残念すぎる。
総司君には、先に試衛館にいる歳三君や、新八君、左之助君たちのように、幕末の頃の記憶があった。
しかし彼の記憶は不完全なようで、私のことだけを覚えていなかった。
総司君は、敬愛する近藤さんがいるはずだった新選組の局長の立場に私が成り代わっていることが、心底気に入らないらしい。
「僕の名前を気安く呼ばないでくれる?」
なんて幼い顔に嫌そうな表情で言われたら、そりゃあ悲しくなるってものだ。
「香耶。大丈夫か?」
「え? ああ、うん」
庭でしゃがんでいじけていると、歳三君が励ましに来てくれた。
「俺が今からでも総司に……」
「いいよいいよ。あの子はあのままで」
「……総司に嫌われたままでもいいって言うのか?」
「よくはないけど……記憶が無いのはしょうがないよ。そのことは自然に任せよう」
記憶のことは自然に任せる。
いまから仲良くなれるように、努力していけばいい。
そう思ったんだけど……。
「千鶴ちゃん、久しぶり!」
「香耶さん……!」
養護施設にいた千鶴ちゃんを新選組のみんなで出迎える。彼女の双子の兄はまだ見つかっていないけれど……転生者たちは着々と新選組に集まっていて。
「千鶴ちゃん……現代の新選組は、アジアンマフィアや裏社会に密接に関わっている。もし君が将来平穏な生活を望むなら、元の生活に戻ってもいいんだよ」
「いいえ。私、幕末の頃の記憶が戻ったときから、例え危険でも香耶さんのお役に立ちたいと決めたんです。私を新選組に置いてください!」
「……うん。わかった」
私は千鶴ちゃんとの再会を喜んだ。他のみんなも、千鶴ちゃんを歓迎した。
「ねえ、千鶴ちゃん。新選組の頃の記憶があるのなら、近藤さんのことだって覚えてるよね」
「沖田さん……? もちろん覚えてます」
「じゃあ、今新選組の局長に納まってるあのひとは……何者だった?」
「香耶さんですか? それは……」
千鶴ちゃんは至極複雑な顔をした。
総司君に私の記憶が無いことは、千鶴ちゃんにも教えてある。けれど実際に総司君の口からそれを聞くと、改めてショックを受けたみたいだ。
「香耶さんは……沖田さんの、大切なひとでした」
「……ふぅん」
総司君は表情を歪めた。私の存在が不愉快だ、とその顔に書いてある。
私はそんな話をしてるふたりに、思い切って近づいた。
「沖田君。麦茶飲むかい?」
「いらない。僕に話しかけないで」
千鶴ちゃんと総司君にコップを差し出すも、総司君は受取らずに去ってしまった。
「香耶さん……」
「……ごめんね、千鶴ちゃん」
心配そうな表情の彼女に私は苦笑するしかできなかった。
ううむ……溝が埋まらない。