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月神香耶side
耳鳴りのような甲高い音が空気を振るわせた。
雲雀君が私を狙った凶弾をトンファーで弾いたのだ。
おおーやるな、雲雀君。五感強化のたまものだ。
彼は小さな体をしなやかに弾ませて、銃を構えた男を手加減無くぶん殴った。
「……香耶っ、怪我は?」
「無いよ。雲雀君が守ってくれたからね」
羅刹なんだから多少の怪我なんかすぐに治る身体だけど、そんなことは関係ない。
「ありがとう」
私がうれしくて、満面の笑みでそう言うと、雲雀君は珍しく顔を赤らめた。
うん。可愛い。
思わず抱きしめたかったけれど、自分の服や手が血だらけなのでそれはやめておいた。
「香耶、大丈夫か? 外のやつらも倒しておいたぜ」
ちょうど折りよく左之助君が顔をのぞかせた。十番組が到着したらしい。
隊士がいるのは組長が成人している二番組と十番組だけだ。昔のように人数はさほど多くなく、部下たちはふだん新選組に付設する企業や孤児院などで働いていたり、一般人にまぎれて生活している。
「誰?」
「彼は原田左之助」
「これでも新選組の実動部隊の隊長だ」
ぽんぽんと左之助君が雲雀君の頭を撫でると、その行動が癇に障ったのか雲雀君はその手を払いのける。けれどその手は触れずに引っ込められた。
「香耶。一般人の子供を弟子にしてることが、これ以上他のマフィアに広まる前にどうにかしろって土方さんが」
「やっぱりかー。早いんだよな。広まるの」
ちらと雲雀君を見れば、不安げな表情を仏頂面で隠してるみたい。まぁ普段から行動を自重しないからなぁ、この子。
「大丈夫だよ。雲雀君はこれからもっと強くなるから」
「おまえがそう言うならいいけどよ」
私がそう言うと、雲雀君は切れ長の目を見開いて驚きの表情をしていた。珍しい。
「おまえがまた誘拐されたら、俺が助けてやるからな」
「いらない」
少年のにべもない即答に、左之助君は苦笑した。