01

月神香耶side



復讐者のバミューダから珍しい宝石を使った義眼を貰った。

「騙し取ったの間違いじゃないですか? 香耶」

「シャラップ骸君! どっちかと言うと脅し取ったって言うのが正しい」

「それってどっちもどっちじゃないか?」

たしかに。薫君の冷静な突っ込みに、こふんと咳払いして紅茶に口をつけた。

「さて、千種君、犬君。今の日本語は理解できたかな?」

「も、もちろんらびょん!」

「はい。香耶様」

うん。犬君のほうは怪しい感じだな。

「今のを例題にするのはどうかと思いますけどね」

「骸君、一言多いってよく言われない?」

それはそうとそろそろ復讐者のところに滞在するのも潮時なんだよな。
ってことで、この五人で荷造り中。私もやっと新選組に帰る決心がついたのである。

歳三君と敬助君には連絡をとっている。ただ、四年も放っといた雲雀君はかんかんだろう。総司君はどうかな。また『出て行け』とか言われちゃうのかな。



もちろん、私もイタリアにいる間ずっと子育てばっかりしてたわけじゃない。ふざけた真似してくれたエストラーネオファミリーは徹底的に潰したし、復讐者の仕事の手伝いもしてた。友達のティモッテオに顔見せに行ったし、とりあえずいろんな意味で新選組の名をこっちでも広めていた。

それなりに有意義なイタリアの生活を満喫中、敬助君からの一本の電話。

『香耶。そろそろ帰ってきなさい』

「は、ハイィ!」

彼の台詞にはその後『雲雀君が拗ねていますからね』と続くのだが、敬助君の半ギレじみた命令に不穏なオーラを感じた私が逆らえるはずもなく、一も二も無く帰国を決意したのである。
そのことをバミューダに言ったら、喜びで泣き崩れていた。どういうことだ。腹立つな。

日本についていくと、かたくなに主張する骸君、犬君、千種君の三人と、新選組の一員である薫君。それ以外の生き残りの子供たちは信用できる家庭やマフィアに里子に出した。
ちなみに犬君と千種君は、骸君の舎弟(?)みたいな存在だ。




そうして特に感動の別れも何もないまま、私と子供たちは、私の夜の炎で作ったワープホールを使って日本の地を踏むことになった。
日本とイタリアはおよそ八時間の時差があり、意気揚々とイタリアを発った正午過ぎ……並盛は驚きの夜である。時差ボケは確実だ。
人気のない公園に降り立った私たちは、私の記憶と勘を頼りに新選組本部への道のりを歩いた。

新選組本部は並盛町と黒曜町のちょうど町境に位置する広大なお屋敷である。

日本家屋風の建物の中は試衛館と名づけられた道場と、普段私たちが生活するための棟に分かれており、幹部にはキッチンとユニットバスつきの個室が与えられることになっている。
現在は幹部が皆幼いこともあって業者を入れて管理しているが、もっと本格的に活動するようになったら組員でやることになるのだろう。
もちろん個室のほかにも私の趣味で食堂に図書館に源泉かけ流しの大浴場にカクテルラウンジまで完備していて、今まで居候していた復讐者の牢獄から見れば贅沢な娯楽施設みたいなものだ。

見覚えのある大通りに出たところで、私の携帯に歳三君から電話がかかってきた。

「もしもし歳三君? どうしたの?」

『香耶、てめぇ今どこにいる。遅ぇんだよ。瞬間移動で帰るんじゃなかったのか』

「瞬間移動使ったよ。なんか黒曜町のほうに飛んじゃった」

『……おまえそれもっと制御できるようにならねえと、また可笑しなところに出ちまうぞ』

「だよねー。長距離だとどうしてもねぇ。もう人体実験は勘弁だよ」

『笑って言うことか……』

笑って会話しながら歩いていると、ようやく新選組本部の明かりが見えてきた。

「……おい、香耶。旗本屋敷みたいなのが見えてきたけど、新選組本部ってまさかあれじゃないだろうな」

「あれが新選組本部だよ?」

幕末・明治時代の頃の質素な暮らしぶりと、目の前の広大なお屋敷を見比べて、薫君は顔を引きつらせた。

「香耶しゃん、晩メシに肉は出るびょん?」

「たぶん出るよ!」

きゃーきゃーはしゃぐ私と犬君を、骸君と千種君が呆れた目で見守る。
そうこうしているうちに、私たちは新選組本部の敷地に足を踏み入れたのだった。

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