02
月神香耶side
新選組本部の玄関に入ると、意外な人物が私たちを出迎えた。
「香耶さん!」
どん、と私の胸元に飛び込んできたのは、かなり見覚えのある少年で……。
「……あ。沖田君」
ずいぶん背も伸びて、すこし逞しくなった総司君だった。
それもそうだ。私が家出した当時小学一年生だった総司君。今年は小学五年生だ。
「ど、どうしたの?」
総司君は私に抱きついて胸に顔をぐいぐい押し付けてくる。ふわふわの猫毛が首に当たってくすぐったかった。
「待ちなさい、香耶になにを…」
「まぁまぁ骸君、敵とかじゃないから」
気色ばむ骸君を苦笑いでなだめる。
っていうか総司君、力強ぇ……実は私を圧死させたいのかな。
とりあえず総司君の頭をゆるゆると撫でてみる。背後では犬君がずるいびょんとか騒ぎ立てるのを、千種君が空気を読んではがいじめにしていた。
「香耶、さん……」
「うん」
おそるおそる顔を上げる総司君に、私は微笑んで応える。
「ごめ、ごめん…なさいっ。気安く呼ぶなっなんて、取り消すから、名前を呼んで……昔みたいに!」
つっかえながらも言い切った総司君の顔には、涙があふれていた。
「記憶……戻ってたの」
「……香耶さんが、家出した日に……」
まさかの四年前!
「ごめん……」
「いや、君が謝ることじゃないよ。仕方がなかったんだから。私こそ、なんだか意地になっちゃって、ごめんね。総司君」
総司君は、離れていた四年分を取り戻そうとしているみたいに、私の身体から離れなかった。
「香耶、貴女は許せるんですか? あの家出のせいで貴女は……」
私は骸君の唇にそっと指を当てた。
「許すもなにも、全ては私の行動のすえの結果だった。あの家出のおかげで骸君たちに出会えたのだし、薫君にも再会できた。悪いことばかりじゃなかったから、後悔なんてしていないよ」
「っ……ずるいですよ、そんな言い方は、」
人体実験を受けたことは、たしかに忌々しい思い出だけれど。それがあって、今があるから。
「過去に囚われすぎないで」
骸君は、泣きそうな顔で私の手を握りしめた。
「よかったですね。沖田君、ずっとふさぎこんでいましたから」
「これで鬱陶しいのがなくなればいいがな」
「敬助君、歳三君!」
奥から歳三君や敬助君、新八君、左之助君、平助君、一君、そして千鶴ちゃんが、ぞろぞろと出てきて、みんな笑顔で私たちを出迎えた。
まるで本当に幕末に戻ったみたいな錯覚を覚える。
千鶴ちゃんは薫君との再会を喜び、新八君たちは骸君たちをもみくちゃにして、敬助君と歳三君は私を威圧。
何より総司君が。
「香耶さん、……もうどこにも行かないで」
そう縋り付いて離れなかったから。
良かった……。これで子供たちが一丸となって新選組を住みやすい場所にしていけたら。