06

月神香耶side



待ち人来たる。

私は校舎から出てきた平助君、薫君、千鶴ちゃんの三人に、それぞれ傘を渡した。

「遅いよー。どんだけ待たせれば気がすむのさ。総司君と一君はもう本部に帰ってきてたのに」

「わりぃ、香耶! これで帰れるって時に先生に呼び止められたんだよ」

「そもそも藤堂がテストであんな点数取らなきゃ俺だって巻き込まれなくてすんだんだ」

「巻き込まれたって、何に?」

「薫、クラスで一番の成績だから、平助君に教えてあげるようにって先生に頼まれちゃったんです」

「なるほどねぇ」

「ふん」

それでもなんだかんだ言いながら、付き合ってくれるんだよね。薫君。


「あれ? 香耶さんの傘はどうしたんですか?」

「困ってるひとにあげちゃった。千鶴ちゃん、傘の中にいれてー」

「あ、はい。どうぞ」

千鶴ちゃんの傘に入れてもらう。なんだかくすぐったい気持ちに包まれる気がした。

「香耶さん、何かいいことでもあったんですか?」

「え?」

「確かに。待たされた割に機嫌よさそうだよな」

「そうかな?」

待たせた平助君がそれを言うなよ。と、彼の頭を軽く小突いて、そして私は小さく笑う。

「……さっき、面白い子に会ったんだ」

「面白い子? 私たちと同じ転生者ですか?」

「いや、違うと思う。なんか気弱そうで、普通の子だよ。……でも強い血を受け継いでる」

そしてたぶん、大空だ。


「プリーモの再来、かもなぁ」

「「「プリーモ?」」」


だから思わず呼び止めてしまったんだ。
あの優しそうな子が、これから波乱と苦悩に巻き込まれてしまうのかもしれない。

「探すか? そいつのこと」

「いいよ、大丈夫。私の予想が正しければ、そのうち否でも応でも関わることになるだろうし」

「ふぅん……」

あの子が走り去った方向を眺めて頬を緩める私を見て、薫君は面白くなさそうな顔をしてた。




新選組本部に帰ったら各々自室で着替え、敷地内に併設されている試衛館道場へと向かう。
基本的に新選組の皆は、放課後から晩ごはんの時間まで帰宅した者から順次道場で汗を流す。強制ではないけれど自主的にだ。
私的には、みんな花の学生時代、部活や委員会などで新しい友人を作って過ごすのも悪くないと思うのだけれど。私が思ってる以上に、みんな強くなることに貪欲なんだよな。

みんなの社会性に思いをはせながら、渡り廊下の床板を踏みしめていると、道場の手前で私を待ち伏せしてる子がひとり。

「あれ、骸君?」

「香耶、おかえりなさい。濡れませんでしたか?」

「ただいま。うん。まだそんな強い雨じゃなかったし」

骸君が鍛錬に行かずこんなところにいるのは珍しい。転生メンバーに比べまだまだ実力の乏しい骸君は、いつも黒曜小の授業が終わったら即帰ってきて新選組の実働隊(二、十番組)に混じって熱心に鍛錬に励んでいる。最近じゃ敬助君をはじめとする霧部隊とともに六道スキルや幻術の精度も磨いているようだ。
同じ槍使いとして手合わせすることの多い左之助君も、最近の骸君の著しい能力向上には舌を巻いている。

そんな骸君が今日は、いつも気まぐれにしか他人に稽古をつけない私に、なにか用があるようだ。
少し切り出すのを逡巡していた骸君は、話を待つ私の目を見て覚悟を決めたように息を吸った。

「……貴女に相談があります」

「うん。場所を変えたほうがいいかな」

んー……あんまり深刻な話じゃないといいけど。

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