08
凪side
夢の中で不思議なひとたちに出会った。
「……ここがこの子の精神世界かぁ」
「ええ……っていうか、貴女はなぜこうもすんなり来れるんですか……」
「あはは、打ちひしがれることはないよ。君の右目は私の左目と対のものだから辿って来られたんだ」
「……そうなんですか」
「ビギナーズラックとも言う」
「ええぇ!?」
ふたりのうち、片方は昨日も会った、骸様だった。
昨日とはずいぶん雰囲気が違う……きっともうひとりの女の人がいるから。
「はじめまして。私は月神香耶」
「……凪、です」
綺麗なひと……。骸様の恋人なのかな? 少し歳が離れすぎてる気もするけど。
彼女の銀色の髪がそよ風に揺れた。
「綺麗なところだね。君の夢は」
「は、い……」
なんて答えていいのかわからなかった。
たしかにここは綺麗なところ。目の前に広がる緑と湖。やわらかな日差しが降り注いで……現実で嫌なことがあっても、ここにいれば少しだけ忘れられるから。
「きっと凪の心は純粋なんでしょう」
「……骸君、その理屈で言うと暗闇で血の雨が降ってる私の精神世界はどう解釈したらいいのかな」
「え…………っと……そんな貴女も素敵ですよ」
「そんなとってつけたようなお世辞はいらん」
これもそんな楽しい夢の続きなのだろうか。
「凪ちゃんもおいで」
「……でも」
「なにをためらうことがあるの?」
香耶様がかがんで私に目線を合わせ、手を伸ばしてくる。
「こんなに楽しそうに笑ってるのに」
「あ……」
私……笑ってた?
「凪。僕たちには君が必要です」
こんなに幸せな気持ちになるのは。
「凪ちゃんが力を貸してくれるなら、あの家から君を連れ去ってあげるよ」
香耶様が私の手を引いてくれるから。
「はい……」
私が歩む世界に。
だから。
どうか、この手をずっと離さないでいて。