09

月神香耶side



新選組本部は並盛町と黒曜町の町境に建ってるけど、厳密に言えば並盛町に属している。
並盛町自体は何の変哲もない土地だ。山があり、川があり。住宅地に商店街。ごくありふれた生活の場。

けれど、私たちみたいな新選組の転生者が自然と集結していたり(一部探した子もいるけど)、ひとりの子ども(恭弥)が町全体を支配していたり。
住んでる人間はなかなかに特殊だ。


「香耶。ちゃんと仕事しろ」

ちょうど執務室で仕事中、マグカップを手に取ったところで、歳三君が難しい顔をしながら部屋に入ってきた。
彼の手には分厚い資料と報告書の束。
うぇ。たまに椅子に座るとこれだよ。

「してるよ。この決済済みの書類の山が目に入らぬか」

「日ごろの行いの報いでしょう」

そんな歳三君の後ろには、私のガラスのハ−トに笑顔で止めを刺す敬助君がいた。
めずらしい。超インドア派の敬助君が、稽古以外でこんな真っ昼間に地下研究室から出てくるなんて。

「コーヒーくらい飲ませてよ。こんなにがんばってるのにさ」

「貴女の仕事ぶりは評価してますよ。……やる気のあるときだけですが」

「敬助君……何? 私を泣かせに来たの?」

「まさか。貴女が手を抜いた分、私たちに仕事が回ってくることはまったく気にませんよ」

すっ……スミマセンでしたあぁぁ!!!


「おい。報告に戻っていいか?」

「ああ、すみませんね。邪魔をしてしまって」

敬助君の不穏な威圧から解放された私は、救世主の歳三君を仰いだ。



「香耶、マフィアボンゴレの独立暗殺部隊を知ってるな?」

「うん、ヴァリアーでしょ」

「そいつらがまたうちに探りをいれにきてるみてえだ」

「ザンザスの解凍法ならヴァリアーにいるアルコバレーノにそれとなく示唆してみたけど」

窓から遠くの空へと視線をやる私に、敬助君も口をはさむ。

「9代目の秘術でしたかね。死ぬ気の炎も新選組ほど研究が進んでいる組織もありませんし、彼らも躍起になっているのでしょう」

「でもさー、解凍にボンゴレリングが要るって言っちゃったら、私ティモッテオを裏切ることになっちゃうんじゃない?」

「黙っておくに越したことはねえ。血の気の多い連中ばっかりだからな。ボス不在のヴァリアーがまたボンゴレに不軌をたくらむ可能性もある」

「うあーめんどくせぇー」

ザンザスがヴァリアーを率い、武力を持ってボンゴレ9代目に反逆した事件を『ゆりかご』という。いろいろとはしょって説明すると、9代目の嫡子であったはずのザンザスが父親のティモッテオ……ボンゴレ9代目に反旗を翻し、暗殺計画を企てるも返り討ちにあって氷付けにされた事件だ。
この事件があった当時、私は復讐者の牢獄に居候していた。

「新選組本部の侵入者対策の強化が必要だな」

「死ぬ気の炎を操れる者には、外であまり能力を多用しないよう忠告しておきましょう」

「ん。……ま、放っておいてもいずれたどり着く気がするけどね……。敬助君は監察方といっしょにトラップや霧の結界を見直しておいて。新選組全構成員はもしヴァリアーと衝突することがあったら無理に守ろうとしないで撒けばいい。
大切なのは本部の建物でも重要機密でもない。人だ」

私の命令に歳三君と敬助君は強くうなずいた。
転生した子達も含め、新選組の子供たちのほとんどは、まだマフィア間の抗争を経験したことがないから。

「出来れば何事もないといいんだけどなー」

「……深刻な話はこれで仕舞いだ。夕方から夏祭りに行くんだろ。さっさと仕事しろ」

「あーい」

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