01

沢田綱吉side



並盛中学の入学式。

俺はひたすら眠いのを我慢して、校長先生の話を聞いていた。
なんとはなしに保護者席を見てみると、なにやら小声で話し込む母さんと月神香耶さんの姿。

って、え……香耶さん!?

香耶さんを見るのは久しぶりだ。俺が小五のときに彼女に貸してもらった傘は、俺の部屋に大事に保管してある。
もちろん返す気はあるけど、あいにく今日会えるなんて思ってなかったから持ってきていない。彼女が言っていた子供たちって言う人たちも、結局見つからずじまいだった。

あんまり後ろを向きっぱなしだと悪目立ちするので、俺はさりげなさを装って前へと向き直った。
校長先生の話よりあっちのほうが気になる。母さん、いつのまにあんなに香耶さんと仲良くなったんだろう……。



『続きまして、風紀委員長祝辞』



……は? 校長先生の話の後に風紀委員長の祝辞なんて、おかしくない?

他の新入生もそう思ったらしく、みんなが呆然と見守る中、いやに腰の低い先生や来賓の間から颯爽と現れた学ランの中学生は、まさに威風堂々とした振る舞いでステージに上がった。

『やあ。僕の前で群れたり騒いだりしたら咬み殺すからそのつもりで』

その風紀委員長は、まるで自分がこの世の頂点、みたいな顔をして言い放った。
それ祝辞じゃなくてただの忠告……。
結局風紀委員長はそれだけを述べて壇上から降りていった。

……うんでも、俺なんかなにやっても並以下だし友達もいないから関わることはないだろう……っていうか怖いし関わりたくない。
その後、風紀委員長は講堂を去り、緊張と睡魔も一緒に去ってやや気の抜けた入学式は何事もなく進んだのだった。



ホームルームの後校舎を出ると、自分の子供を待つたくさんの保護者と一緒に母さんも待っていた

「あら、ツッ君。おかえりなさい。新しいクラスはどうだった?」

「あー、うん。まあまあ」

母さんの声に適当にあいづちを打ちながら、視線は香耶さんを探す。
もう帰ってしまったのだろう。香耶さんの姿を見つけることはできなかった。

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