02

月神香耶side



私は入学式の後、応接室に招かれていた。
『風紀』の腕章をつけた、ガタイのいいリーゼントの男の子が、私の前にコトリとケーキセットを置く。なかなかシュールな画だ。

「あれ、ナミモリーヌのケーキだ」

「はい。チーズケーキがお嫌いでなければ…」

「大好きなんだ! ありがとう!」

満面の笑みで風紀副委員長の草壁君を仰ぎ見れば、彼は顔をぶわっと真っ赤に染めて目を逸らした。

「……草壁。校内の見回りに行ってきなよ」

「は、はいっ!」

しかしなぜだか恭弥は不機嫌そうで、その怒気に追い立てられるように草壁君は応接室を出て行ってしまった。
それを見送りつつ、チーズケーキの上に乗ってたブルーベリーを先に口に放り込んでいると、恭弥が同じソファーに座ってくる。

「仕事は終わったの?」

「まぁね」

彼の事務机には、謎の書類が積みあげられている。あれを毎日やっているとは脱帽する。……私だったら逃げ出す仕事量だ。

草壁君が用意してった温かいティーカップに紅茶を淹れる。
恭弥の分のカップまで温めていくとはすごいな、草壁君。欲しい人材だ。
感動していると恭弥の手が横から伸びてきてカップをさらっていった。

「ん。美味しい」

「お茶を淹れるのは得意だからね」

伊達に長生きはしていない。お茶を淹れるのはもはや特技だ。

「恭弥もケーキ食べる?」

「いらない」

それより、と恭弥はごろりと横になり、私の膝に頭を置いた。
私はちょうどケーキから目を離した隙で、恭弥の行動を止めることができなかった。

「ちょ…」

「立ち上がったりしたら咬み殺すよ」

「えぇー……」

恭弥は私の膝を枕にしたまま目を閉じてしまった。なんて横暴な。
私は書類の積まれた机に視線をやり、恭弥の頭に視線を戻す。

……もう。仕方ないな。

なんだか最近、仕方ないってのが口癖になりそうだ。
おつかれさま、とは口に出さずにいるものの、ねぎらいの意味をこめてしばらく膝を貸してやることにする。

私が残りのチーズケーキを食べるためにテーブルに手を伸ばすと、恭弥は背を向けるように寝返りをうった。


(香耶の胸が顔に当たってる……)

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