04
沢田綱吉side
「なぁ沢田、おまえ国語の便覧持ってる?」
「え、う、うん」
隣の席の藤堂君に話しかけられて、少し緊張してしまった。
「わりぃ、見せてくんね? 俺、忘れてきちゃってさー」
「わかった……机くっつけたほうがいいよね」
藤堂平助君といえば、クラスのムードメーカーで、運動神経抜群で、しかもかっこよくて、モテる男子だ。
そんな子と隣の席なのに、なんで挨拶くらいしかしたことなかったかというと、藤堂君がいつも誰かと仲良く喋ってたりしてるから。
俺なんかとは正反対で、友達もたぶんいっぱいいるんだろうな。
くっつけた二つの机の真ん中に置いた便覧を、ぼうっと見つめながら考え事をしていると、藤堂君が俺の腕をとんとん叩いてきた。
「沢田沢田」
「え……なに?」
「当てられてるぜ」
「あっ」
はっと前を向けば、先生が……いや教室中が俺を注目していて、軽くパニックになった。
とりあえず席から立ち上がったけど、先生の話を聞いてなかった俺は何をすればいいのかわからない。その様子に先生は眉をしかめた。
「おい、沢田。授業聞いてなかったのか?」
「あ、う」
しどろもどろになっていると、藤堂君がこっそり俺の教科書を指差して、ここを読むんだって教えてくれた。
た、助かった……!
「……ありがとう、藤堂君」
「いいって!」
藤堂君がいい人でよかった……!
にかっと白い歯を見せて笑う藤堂君が眩しかった。
ほんのちょっと嬉しいことがあった一日を終えて、何事もなく下校した俺を、ヒットマンだと名乗るわけの分からない赤ん坊が待ち構えてるなんて、今の俺は知るよしもないのだけれど。