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六道骸side
「……骸様?」
クロームに名を呼ばれて、はっと意識が覚醒した。
「骸しゃん、目が痛いんれすか?」
「、違う……」
ここは、黒曜中学校、生徒会室。目のまえのクローム、犬、千種が心配そうに僕を見ている。
なのに、今……違う景色が見えた。
僕は六道眼である右目に手をかざし、先ほどの現象の原因を探すが……右目はすでに僕のてのひらを映すだけだった。
「……もしかして、なにかあったのは香耶様のほうでは、」
「ありえますね……。この目は香耶のものですから、僕と香耶は根底でつながっている」
「それってちょっと羨ましいびょん」
「犬、不謹慎」
それよりも、問題は映像のほうだ。
おそらくは応接室……並盛中学校か。とても近い距離に雲雀恭弥の姿があった。トンファーをその手に握っていて、一見すれば稽古をつけていたと考えられなくもないが……違う。おかしい部分があった。
扇情的に上気した頬も、歪められた表情も。それは一心に香耶へ向けられたもので。
まるで、情事の後のような。
「……チッ」
無意識に舌打ちが出る。
そもそも香耶は幻術師ではない。その香耶が僕の眼に映像を送り込んでくるとなると、膨大な集中力・精神力が必要だろう。
おそらく、香耶は。
「──羅刹になりましたね」
そして高ぶった感情が引き起こした現象、なのだとしたら。
椅子を乱暴に引いて立ち上がり、僕は生徒会室を足早に出る。
「骸様!」
「どこ行くんれすか!?」
「おまえ達は先に新選組へ帰りなさい。僕は雲雀に会いに行きます」
急ぎ足で部屋を出る僕に犬が食い下がるが。
「らったら俺らも、」
「帰りなさい、と言っているんです」
「は、ハイ!!」
三人は僕の怒気にびくりと身体を震わせた。それに背を向け僕は駆け出す。
僕はいま頭にきている。おまえ達に当り散らすようなことはしたくない。
だからひとりで充分。
香耶は平日の日中、ほとんど新選組本部にいない。
並盛や黒曜をふらふら彷徨っている香耶を探すより、確実に並中にいるであろう雲雀を訪ねたほうが早いと僕は考えた。
が、並盛川に差し掛かったあたりで、橋の欄干に腰かけ、膝に頬杖を付く香耶を発見したのだ。
なんとも危なっかしい。風でも吹けば川に落ちそうだ。
「香耶!」
「あ、え?」
振り向いた香耶の身体がぐらっと揺れたような気がして、僕は必死に香耶を抱きしめた。
でも校庭のフェンスに駆け上がれるような香耶がそんなヘマをするはずがなく。
落ちるような気がしただけで、僕の慌て損だと気付いたのは、香耶を欄干から降ろして向き合ったときだった。
「あ……」
「……どうしたの骸君、なんだかすごい形相だったね」
「っあなたが、こんな所に座ってるから! 落ちるつもりなのかと思ったじゃないですか」
「ええ、そうなの?」
ごめんごめん、なんてちっとも反省の色が見えない謝罪に、僕の肩から力が抜けた。