22

月神香耶side



ぅああ〜最近わたし真面目に仕事しすぎ。並盛町に来るマフィアが増えたからだ。

「ボンゴレのばかやろー」



新選組ボスのために用意された3LDKの自室に戻る。ダイニングもキッチンもほとんど手をつけていないけれど(だって使わないから)、寝室だけはカスタマイズしてある。
そんな寝室に一歩足を踏み入れると、20畳ほどの部屋はその四方の壁が全て本棚になっていて、図書館顔負けな24時間空調完備。中央にダブルサイズのベッドと書斎机がある、完全に私の趣味を反映した部屋が疲れた私をお出迎えするのだ。

持って帰ってきた本や携帯などを机に投げ置いて、ふかふかのベッドにダイブする。
お風呂にはもう入ったので、あとは寝るだけの現実が睡魔と一緒に私の背中をお布団へと押し付けてきて。
それでも気力を振り絞って携帯を手に取り、アラームをいつもより早めの6:30にセット。それを机から枕元に伸びる充電器に繋いで、私はいそいそと布団をかぶった。



しかし、目を瞑ってしばらくもしないうちに。
キシッ、と私のものじゃない誰かの体重でスプリングが沈んで、私の意識はふわりと覚醒した。

「……だれ?」

常夜灯の光を背負って誰かが私を覗き込んでいる。



「僕だけど」

声で総司君だと理解すると、私は緊張していた肩の力を抜いた。

まぁ深夜でもボスの私室に他マフィアの進入を許すほど新選組のセキュリティは甘くないつもりだけど。ただ一応、隊士(新選組構成員)のみんなは出入り自由である。部屋の鍵なんてめったにかけないから。

「ん〜……どうしたこんな時間に」

なぜか総司君が掛け布団をめくろうとしてくるのを、私は布団に抱きついて抵抗する。肌触りがいいんだよ、これ。

「いっしょに寝たいのー?」

はいどうぞ、と横にスペースをあけてみる。いいかげん私を眠らせてくれ。
枕に顔を押し付けて目を閉じると、遠のきかけた睡魔はすぐに私を眠りの世界へ誘った。

が、しかし。

強い力で肩を引かれ無理やり仰向けにされて、私は再び総司君と対峙することになる。



「う……なにす、」

なにするんだよーと言いかけた私の唇は、次の瞬間には総司君のそれで塞がれていて。
目を見開くと、私は自分が総司君に馬乗りにされて襲われているらしいことを理解した。



「ん、んん!?」

ぱかりと口を開けると、待ってましたとばかりに総司君の舌が口腔に侵入してくる。

「待っ……!」

「……ん、」

幕末の頃つちかったテクニックか、官能的な口付けに頭の芯が痺れてくる。
あふれた唾液が顎を伝うと、総司君はそれをぺろりと舐めていったん顔を離した。



「……総司、くん」

「うっわ、エロい顔。そうやって雲雀君を誘ったの?」

「、え」

「それとも無理やりされちゃった?」

「なにを……」

「雲雀君なんか忘れさせてあげる」

「や、め」

千鶴ちゃんやクロームちゃんとおそろいで買ったパジャマのボタンをゆっくりと外される。
振りほどこうとしても純粋な力ではかなわず、隙も見つからなくて私は真剣に焦り始めた。

「まま待って! たぶん根も葉もないうわさを信じたんだろうけど嘘だよ私恭弥に抱かれてなんかない」

「本当かどうかは今から確かめる」

「どっちにしろ進んじゃうの!?」

「香耶さんはさ……」

総司君がボタンに右手をかけたまま止まった。
とりあえず自分の身体をたしかめてみると……おぉっと黒いブラがチラ見えの状態だ。手は総司君の左手に捕まったままなので、とりあえず逃げる隙を探しながら、私はおとなしく総司君の言葉の続きを待つことにした。



「いつも僕がどんな思いで君を見てるか知りもしないよね」

「……私は鈍いよ。言われなきゃ気付かない」

「自分で言わないでよ。知ってるけど」



彼の右手が、私の胸元から首筋へと辿る。緊張が背中を這い上がってきた。



「火の無いところから煙は立たない。って言うでしょ。君が雲雀君に白昼堂々通学路でキスされてるのを見たって生徒は一人や二人じゃないみたいだよ」

「まじで!?」

調べたのか。

その目撃情報がじわじわと尾ひれ背びれをくっつけながら、最終的に私や総司君のもとに届いたらしい。

「それ聞いたとき、雲雀君を殺しに行こうかなって本気で考えたけど……」

「う、うん…?」

「それだと後々面倒臭いことになるだろうし、それに」

総司君は自分の唇を舐めて、暗く笑う。

「あいつの目のまえで香耶さんを奪い返してやったほうが、いい復讐になる」

「…………」


それは


「恭弥へのあてつけのつもりで……」

「べつにそんなつもりだけで夜這いに来たわけじゃないけど。手を出そうと思うのも、こんな気持ちになるのも、ぜんぶ香耶さんだから」


香耶さんが好きだから。


そう囁きながら、私の咽元に噛み付くように痕をつける総司君は、牙をむく獣のようにも、迷子の子どものようにも見えた。

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