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沖田総司side
「よし。それでは第四十六回総司の暴走反省会を始める」
「ちょっと待て斎藤。過去四十五回もしてんのかよこれ」
「ああ。薫、あんたが香耶と一緒にイタリアにいた頃にな」
放課後、怒り心頭の一君に連れて行かれた新選組本部第三会議室。
そこでは一君に、彼に連れてこられた僕、薫、平助、左之さん、新八さんが、ぐるりと輪になってひそひそと話し合いを行っていた。
「今回の議題は、総司が香耶の部屋に忍び込みあまつさえ彼女のベッドに乗り上げて服を脱がせた件について」
「ま、マジ?」
「おまえなぁ……」
みんなの白い目線を、僕はあさっての方角を向いてそらす。
「みんなに文句を言われる筋合いは無いよ」
「馬鹿を言うな。そういうことは香耶の同意を得てからにしろ。俺たちがなんのためにいると思っている」
「ぐっ」
一君にそれを言われたら何も返せないけど。
僕たちの役割はただひとつ。香耶さんを守ること。それに尽きるのだから。
「総司、女を振り向かせるには俺みてえな筋肉美をだな、」
「新八っつぁんはいっつもそれだよ」
「香耶があんたに惚れない限り、その持論には信憑性が無いと思うけど」
「ちくしょー! おまえらに俺のすばらしさがわかるかってんだ」
「落ち着けよ、新八。それより総司、そのことは土方さんは知ってるのか?」
「まだ怒られてないから、たぶん知らないと思うよ」
「……香耶が副長に報告しないと決めたのなら、それに従わんわけにはいくまい」
「香耶のやつ、総司に甘すぎ」
平助はガシガシと頭をかいて、僕を見た。
「香耶さんが僕だけに甘いってことはないでしょ」
香耶さんは一旦ふところに入れたものをとことん甘やかす。
だから新選組のボスなんてものをやってるんだろうけど。
「つまり、沖田は香耶に恋愛対象として見られてない、と」
ムカッ。
「薫にそれを言われたくはなかったなぁ。少なくとも僕のほうが君より香耶さんに近いところにいる」
「じゃあ今回のことで離れたかもね」
僕と薫は互いに鯉口を切った。
「待て待て二人とも! こんな物が密集してるところで刀を抜きあうなって!」
「っつーか、今どこから菊一文字と大通連を出してきたんだよ」
もちろん自室から持参してきたに決まってる。
「総司、これ以上香耶に負担をかけるな」
「けんかを売ってきたのは薫のほうなんだけど」
「子供のような言い訳をするんじゃない。局中法度を破った隊士がどのような罰を受けるか知っているか?」
隊規違反は切腹……だったのは幕末の頃の話だ。
現在は土方さんや山南さんの説教とか、清掃作業や奉仕作業だとか、支部や営業施設への左遷、悪くて追放、投獄、粛清。
まぁ、局内で隊士が粛清……処刑されたことなんて僕が転生して今までなかったけど。何したら粛清なんてされるんだろ?
とにかくもしここで誤って薫を殺したりなんかして香耶さんの手を煩わせるのは本意じゃないから、僕はしぶしぶ刀の柄から手を離して座りなおした。
が、薫はそんな僕たちの会話なんてなかったようにあさってのほうを向いている。
「薫?」
一瞬僕をまた挑発でもしてるのかと思ったけれど、薫は厳しい目線を会議室の入り口の向こうに向けていた。
「──鬼の気配がする」
『っきゃぁぁああ!!?』
薫が外へと足を踏み出そうとするのと同時に聞こえた悲鳴。それに全員が身体を硬直させた。
「千鶴の声、か?」
「玄関だ。行くぞ」
その声に会議の輪は崩れ、みんな得物を取って走り出す。
千鶴ちゃんには悪いけど、反省会はお開きになったのは良かった。
僕たちが現場にたどり着くと、玄関とリビングにはすでに人の気配が集まっていて。
その気配の中心で、凶器を抜きつけあっている香耶さんと、風間の姿があった。