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月神香耶side



「ふん。躾のなっていない番犬がよく吠える。香耶、客に茶も出さんつもりか?」

「そういうセリフは手土産のひとつも持ってきて私に誠心誠意謝ってから言え風間コノヤロー」

言いながら彼の前に煎茶の入った湯飲みを叩きつける私がいた。くっ……日ごろのおさんどんで身についた習性が!

リビングとひと続きになっているダイニングには、出向中の骸君たちを除き新選組の幹部格が勢ぞろいしている。千鶴ちゃんのあの悲鳴でみんな集まってきたらしい。全員何かしらの凶器を手にして。
そんなみんなの警戒心と敵愾心を一身に向けられている千景君は、しかし動揺する様子など微塵もなく優雅に湯飲みを傾けた。絵になるとこがまたいちいち腹立つ男だ。

今日は金髪のイケメンに縁がある。さっきのディーノも金髪だったし。

「侵入者じゃ…ないの?」

「ほう、初めて見る顔か? 俺は新選組のアジア支部を預かる者だ」

「風間千景。彼も転生者だよ。で、この子はクローム髑髏。他にも何人か新顔がいるけど今任務中でいないんだ」

新選組の敵である尊皇攘夷派に協力していた薩摩の鬼の頭領、千景君は、再び西日本の地に転生し、いまや皮肉にも新選組になくてはならない存在となっている。

もともと鬼の一族でも風間家は貴重な純血筋だったが、この時代では人間との交雑が進み、風間家といえど人間に限りなく近い種族になっている。
千景君はその風間家の嫡男であり先祖がえりの強い血を受け継いだ突然変異種で、今はもう誰もできない真の鬼の姿にもなれる絶滅種だ。人には持ち得ない潜在能力、身体能力、そしてカリスマ。鼻持ちならない男ではあるが有能であることも事実。

「それにしても、もう何年も姿を見せなかったのにわざわざ並盛くんだりまで来るなんてどうしたの?」

「最近はこの地も騒がしくなってきたと耳にしたからな。我が妻の身を案じこうして足を運んだまでのこと」

その言葉にぴくりと反応したのが若干名いた。それを代表して口を開いたのは、総司君。

「へぇ……風間が誰を心配しようと勝手だけど、今の『我が妻』っていうのが誰を指すのかによっては、君をここから追い出さなきゃならないなぁ」

「では期待に応えてやろう。無論、香耶のことに決まっている」

「やめろおまえら」

「これ以上争うなら外でやりなさいよー」

歳三君と私に止められて、総司君と千景君はしぶしぶ椅子に座りなおす。
今じゃ私が上司だからね。話し合いの最中に勝手な真似はさせません。

もしこれがホント乙ゲーかなんかだったら萌えつきて灰にでもなれる状況かもしれないけど、私は自分に思いを寄せる男供がかなりムチャクチャなやつらだと知っている。
千景君なんか“西日本”支部を任せてたはずなのに、いつの間にか上海にまでシマを広げてやがったからね。総長が事後承諾したらしいけど。ボスに了解とれよまじで。まぁ積極的に仕事してこなかった私も私なのだけど。

あ、誤解しないでほしいけど最近はちゃんと仕事してます。骸君に約束したからね。



「そういえば大陸でレアメタル鉱の権利を発掘したぞ。おまえ名義だ」

「あのねぇ千景君…………いや、うん。ありがとう」

(((諦めた……)))

まったく。有能な部下を持てて幸せだよ。

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