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沖田総司side



今回の旅行。一日目は船で一泊し、翌日は動くリゾート島であそんで船で帰る、という一泊二日の行程だ。
香耶さんがカジノで稼いだお金でエステを受けてる間、船上プールの脇に並ぶデッキチェアでだらだらとジュースを飲んでる僕にリボーン君が話しかけてきた。

「ちゃおっす沖田。香耶は船旅を満喫してるみてーだな」

「おかげさまでね」

リボーン君は今日も変なカッコしてる。短い付き合いだけどだんだんわかってきた。この子が可笑しな変装とかするときって、決まって沢田君がなにかしらの事件に巻き込まれてろくでもない目にあうんだよね。
今もほら、必死な様子の沢田君が何かを探しながらこちらに向かってくるから、僕はグラスを片手に彼に声をかけた。

「沢田君、君ってバカンスに来ても走りまわらされてるんだね」

「は、ええぇ!!? 沖田先輩までなんでこの船に! もももしかして先輩も無断乗船ですか!?」

「無断乗船?」

そんなわけはない。
よくよく話を聞けば、沢田君が探してるのはリボーン君とビアンキってひとで、なんでも船のガードマンを倒して密航してきたのだとか。

「ふぅん。リボーン君ならここに……あれ、いないや。さっきまでここにいたのに」

「そんな……! あーもう、どこいったんだよあいつ! あ、先輩ありがとうございました!」

そして跳ねた髪をかきむしりながら、沢田君は足早に去っていった。


「……で、リボーン君が無断乗船で指名手配されてるって本当?」

「違うぞ。オレたちはちゃんと手続きして乗船してるからな」

「だと思った」

デッキチェアの陰からひょっこり出てきたリボーン君は、眼下の甲板を走る沢田君を眺めやりニヒルに口を開く。
沢田君、自分の家庭教師に騙されてるよ。からかい甲斐がある子だ。もしリボーン君に本気で密航させたなら、指名手配なんてされるような甘い仕事はしないだろうに。

「ツナのヤツ、マフィア関係者だらけの船に沖田が乗ってることに何の疑問も感じなかったみてーだ」

「あ、本当だね。まだまだだなぁ」

マフィアランドに着いたらねっちょりお仕置きだな、なんて不穏に呟くリボーン君。沢田君には同情を禁じ得ない。

「それじゃあオレはもういくぞ。香耶に言っとけ。おめーはいつも隙が無さすぎる。たまには仕事も子育ても忘れてみろってな」

その言葉に僕は瞬いた。

「そんな理由で僕たちを招待したの?」

もっとなにか裏があると思ってたけど。

「あいつには個人的に借りもあるしな。それにマフィアは女にやさしくするもんだぞ」

「ふぅん」

“借り”ね。

まぁ、香耶さんがアルコバレーノって存在と昔から面識があるってことは知っていた。今回のこれも、そんな彼らのつき合いの延長上のものなのかもしれない。
僕としては、香耶さん(と僕)の利になることなら、リボーン君のすることにいくらでも手を貸すつもりだし、そうじゃなければ徹底的に傍観するだけだ。

デッキから去るリボーン君の後ろ姿を見えなくなるまで眺めていると、今度は横手から僕の待ち人の声がかかった。

「総司くん、お待たせ」

「香耶さん」

振り返れば、いつもよりどことなく笑顔のツヤっとした香耶さんが立っていて、僕もなんだか安心する。少しちょうだいよ、と彼女が僕の飲みかけのジュースに口をつける様子に面映ゆい気持ちになった。
香耶さんがそばに近づくと、ふわりと香気が鼻孔を掠め、僕は思わず彼女の手をとる。

「甘いにおいがする」

「わ、」

その手を引いて、僕が座るデッキチェアに膝をついた香耶さんの首筋に鼻先をうずめる。アロマオイルのにおいかな。甘くておいしそう。
反射的に緊張する彼女の背中をするするとなでて、僕は深呼吸した。

「ああもう。たべちゃいたいなぁ」

「そ、総司君……」

僕としても今回の旅行は最近忙しそうな香耶さんに羽を伸ばしてもらうのが目的で、彼女に手を出そうってつもりはなかったんだけど……。ツインとはいえ今夜は同室だし、これはなかなか忍耐が要るかもなぁ。ある意味苦行だと言える。僕も精神年齢はともかく、身体的には思春期だしね。

そんなことを考えてちょっと苦笑し、うろたえる彼女を解放してあげたのだった。

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