いなくなっちゃえ(sideするり)

母部するりside



西本願寺に住めることになった。掴みは上々。みんなあたしの可愛さに釘付けだったわ。
あてがわれた部屋で暇をもてあましていると、月神と雪村さんが部屋を訪ねてきた。

「やあ。するりちゃん、大丈夫? 着物を持ってきたけど」

「あの、土方さんが母部さんにも男装をしろと……」

「ああ、男装ね。わかってるわ。男所帯だものね」

我ながら天使のような笑顔を浮かべられたと思う。その証拠に雪村さんは大きな眼をもっと大きく見開いて驚いたような顔をしたもの。
雪村さんは主人公だけあってやっぱり可愛い。ま、あたしほどじゃないと思うけど。

月神が差し出した着流しと袴を奪い取り、雪村さんを部屋に招き入れる。
だって話し相手がほしいし、なにより袴なんて一人じゃ着られないから。でも月神じゃ問題外。

「あ、あの、香耶さんはっ!?」

「月神さんはいいの。あたし雪村さんとお友達になりたいな。だって同い年でしょ」

雪村さんはおろおろとあたしと月神の顔を見比べていたけど、暫し悩んで、あたしにうんとうなずいた。
うふ。わかってるじゃない。雪村さんも月神みたいな悪女より、あたしといたほうがいいに決まってるわ。



「千鶴ちゃん、ここはお願いしていいかな?」

「あのでも、私一人じゃ…」

「不安にさせてごめんね? でもちゃんと上(天井裏)から烝君が見ててくれるし、これは千鶴ちゃんにしかできないことだから」

「は、はい! 私、香耶さんの期待に応えられるよう務めてみせますっ」

「あ、あんまり気負わないでいいよ。なんだか私が不安になってくる」

あたしの聞こえないところで、こんな会話がされていた。



「ね、千鶴ちゃんって呼んでもいい? あたしのこともするりって呼んでいいわよ」

「う、うん、するりちゃん。同い年なの?」

「そうよ。あたし数えで16歳だもの」

「そっか、じゃあ一緒だね。私、同じ年頃の女の子とおしゃべりすることって最近なかったから嬉しいな」

「あらそうよね。千鶴ちゃんはずっと新選組で暮らしてるものね。でもよくこんなムサいとこで耐えられるわ。幹部はかっこいいけど」

「え、そ…そうかな……? するりちゃんもそのうち慣れると思う、けど」

千鶴ちゃんが持ってきてくれたお茶に口をつける。ちょっと冷めてるけど……うん。まあまあね。

「ところで、あの月神さんって……何者?」

「え、香耶さんのこと? 香耶さんは私と同じで、羅刹を見てしまったからここに捕まったの」

「そうなの? 千鶴ちゃんと一緒に?」

「うん」

「でもずいぶん自由にしてるのね。浪士を斬っていたときも一人だったし……あのひとは一人で外出していいの?」

「う、うーん……ほんとはだめ、かなぁ? でも注意しても治らないから、今では土方さんたちも黙認してるみたい。それに、香耶さん強いから」

「あぁ……確かに強いみたいね……」

あたしは月を背に血まみれで微笑む月神の姿を思い出した。あんなふうに人を斬って笑っていられるなんて、恐ろしい女。
あのときの恐怖心を思い出して、あたしは顔をしかめた。

「心配しないで、千鶴ちゃん」

「え……? なにを?」

「あたし月神なんかに負けないから!」

「え、え?」

「あたしが千鶴ちゃんのために、月神をぎゃふんと言わせてやるんだから!」

「そ、そうなの? ……えっと、応援してるね」

「任せて!」

あたしの思ったとおりだわ。
きっと千鶴ちゃんは、今までずっと月神に虐められていたんだ。
あたしや千鶴ちゃんを虐げて、新選組幹部にばかり愛想を振りまいている月神なんて、いなくなっちゃえばいいのよ!
月神がホントは逆ハー狙いの最低な女だったって知ったら、幹部達も目を覚ましてくれるはず。
あたし、月神から新選組を守るためにがんばるわ!




(どうだった、千鶴ちゃん。するりちゃんに何か言われた?)

(はい……するりちゃんは、なんだか香耶さんのことをすごく怒ってるみたいでした。香耶さんをぎゃふんと言わせてやると言ってました)

(ふぅん、私をぎゃふんとねぇ……)

(あの……香耶さん、)

(大丈夫だよ千鶴ちゃん。よくわかんないけど、心配要らないよ)

(……わかりました。でも、何かあったら言ってくださいね)

(うん。ありがと)

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