誰か、助けてくれ(side斎藤)
斎藤一side
未来から来た女。母部するり。
俺は最初、母部のことも香耶のように憎めなくて、無条件で俺のような者のことを理解してくれる女だと思っていた。
だが、同じ未来から来た、と言っても、やはり誰も彼もが女神のような女ばかりではないのだな。
そう思うと香耶という存在は、やはり稀有な、唯一の尊い人間なのだと思う。
「まぁまぁ歳三君。ご飯くらいいいんじゃないかな。するりちゃんだって、監視されながら一人で食べるなんて寂しいだろうし、監視組の労力も減って一石二鳥でしょう」
「…………」
あれだけ母部の要求を突っぱねていた副長が、香耶の言葉に唸った。
香耶のおかげで多少やわらいだとはいえ、このぴりぴりした空気に雪村はおろおろと困惑しているし、総司や左之は我関せずといった様子。平助たちはうんざりした表情だ。
香耶がここまで言うということは、彼女になにか考えがあるということだろうか。何をしたいか知らないが、しかし今まで香耶の決めてきたことに間違いはなかったから。
俺は、香耶の言うことにはできるだけ従いたいと思う。
「……香耶がそこまで言うなら仕方ねえ」
その言葉に母部はぱっと副長を見た。
「えっ、それじゃあ……」
「飯のときだけだからな」
やったぁー! と、母部は歓声を上げ飛び上がる。
「あ、じゃあ私、するりちゃんのお膳を取ってくるね」
「うん。千鶴ちゃん、お願いね」
雪村が席を立った。母部の膳は母部の部屋にある。監視役の平助が持っていったからだ。
俺は、未だ母部の口から礼の言葉を一言も聞いていないことが気になった。香耶にも、雪村にも恩があるというのに。
副長がやむを得ず許可をだすと、上機嫌になった母部は我が物顔で俺のところにやってくる。いや、正確には、俺と総司の間……香耶の席に。
「月神さん、あたしここに座ってもいいかしら」
「うん? いいよ。じゃあ総司君、そっちに詰めていいかな」
「うん」
香耶、何ゆえ総司のほうに行くのだ。恋仲だからか?
母部が俺と香耶の間に座る。総司を見れば、どことなく安心したような表情だ。俺は今日ほど香耶を恨んだ日はないだろう。
「斎藤さん、よろしくおねがいします」
「あ、ああ……」
母部は俺にしな垂れかかってきた。
誰か、助けてくれ。