きっと誤解された(side沖田)
沖田総司side
土方さんはいつまであの子を野放しにしておくつもりなんだろう。
今日はあの程度の傷ですんでも、明日は大怪我をするかもしれない。香耶さんが死なない保障だってどこにもないのに。
イラつきながら自室のふすまを開けると、そこにはなぜかするりちゃんの姿があった。
「……君、こんなところでなにしてるの」
一瞬自分の部屋を間違えたのかと思った。
「沖田さんに洗濯物を……」
「部屋の中に入らなくても、ふすまの内側においておけばいいから」
確かにするりちゃんはたたまれた洗濯物を手にしている。どうせ洗うとこからたたむとこまで千鶴ちゃんがやってくれたんだろうけど。
ただ、するりちゃんの味方をしてあげるっていう任務内容を思い出して、僕は言いたいことを全部ため息にして吐き出した。
目のまえの彼女もなにか言いたいことがあるみたいにもじもじしていたけれど、ようやく覚悟を決めたように僕を上目遣いでうかがった。
「あの……その、じつは昼間に足をくじいて……座ったら立てなくなっちゃいました」
「……、」
それ、ほんとう? なんて口走りそうになった。だってこの子、夕餉のときいつものように一君に引っ付いて、そのあともけろっとしていたのに。
「……沖田さん?」
「わかった。ちょっと見せてくれる?」
袴の裾に隠れた足を診ようと彼女の足元にしゃがみこむ。
ちょうど僕の手には包帯がある。これは香耶さんを呼んで手当てしようと思っていたものだ。
でもまずこの子を穏便に部屋から追い出さなきゃならない。さっさとくじいたらしい場所をぐるぐる巻きにしておけば満足して帰るだろう。
「裾上げるけど、いい?」
「は、はい!」
頬を染めるするりちゃんに足を出してもらい、綺麗なさらしを用意する。
が、なぜか彼女は体制を崩して僕の首元にしがみついた。
「きゃぁ!」
「わっ」
しゃがんだ状態だった僕は、彼女に引っ張られるようにして倒れこむ。
しかも、その瞬間を狙ったように部屋のふすまが誰かによって開けられた。
「あ」
「え」
現れたのは香耶さんだった。
彼女は確かめるように僕の部屋をぐるりと眺め回し、最後に僕たちを見てぱちくりと瞬いた。
「こ…れは失礼」
そしてすすすーっと開けたふすまをまた閉めた。
僕ははっと我に返った。
この状況は……まずい。
香耶さんが見たものはどう考えても、するりちゃんを押し倒す僕の画。
きっと誤解された!
僕は弾かれるように身を起こし、香耶さんが閉めたふすまを開け放った。
「香耶さん!」
廊下にはすでに人の気配はなかった。
愕然とする僕の背後からは、事の重大さを理解してないのかそれとも確信犯なのか、鼻につく猫なで声が聞こえて。
「沖田さん、あたしをひとりにしないでぇ」
声の主に背を向けたまま、僕は思わず刀の柄に手をかけてしまった。
だって猛烈に腹が立ったから。ここで斬っちゃっといたほうが世のため人のためてものでしょ。
いつまでも振り向かない僕に、するりちゃんはもういちど沖田さん、と口を開いた
「出て行って」
「え?」
「……僕がつぎにこの部屋に戻ってきたときに君がまだここにいたら、殺すから」
「な、」
するりちゃんの返事を聞く暇も惜しくて、僕はそのまま部屋から飛び出したのだった。