ツンデレだわ(sideするり)

母部するりside


昼間の出来事はうまくいってよかった。
月神が私に斬りかかったって言えば、みんなそれを信じて月神を非難していた。

その月神をしばらく観察していたら、ひとつわかったことがある。
あの月神は、沖田さんに恋してるらしい、って。だって沖田さんを目で追ってることが多いし、彼と話すときはすっごくいい笑顔になるし。

なら、あたしも沖田さんを狙っちゃおうかしら。
沖田さんって、やっぱりこうして実物を見てもすっごくカッコいいし、ちょっと意地悪なところも可愛いし。
手っ取り早く沖田さんを手に入れるには、やっぱり彼にあたしの魅力を知ってもらわなくっちゃ。

だから洗濯物を届けるって名目で沖田さんの部屋に入って、沖田さんが帰ってくるのを待った。
よろけたふりをして沖田さんに抱きついたらいい感じに押し倒されて、そこを月神に目撃されて。
いつもすました月神でも、これなら悔しいでしょ。いい気味だわ。沖田さんはあたしのものなんだから。

なのに。

「出て行って」

「え?」

「……僕がつぎにこの部屋に戻ってきたときに君がまだここにいたら、殺すから」


なんでよっ!
沖田さんの殺気に晒されてすくんでしまった。
足をくじいたっていうのは嘘だけど、沖田さんが去った後も身体が震えて動けない。

「なによっ! なんであたしを放っておくのよ! こんなに可愛いあたしを!」

許せない。どれもこれもみんな月神がいるせいよ。
許せない!



結局いつまで経っても沖田さんは帰ってこなかったから、あたしは自分の部屋に戻った。
そしてどうにか月神をここから追い出す方法がないか、考えた。
翌朝、千鶴ちゃんがあたしを起こしに来たとき、興味深いことを聞いた。

「するりちゃん、昨日香耶さんと沖田さんの間で何があったか知ってる?」

「え? なんで?」

「なんかね、香耶さんと沖田さんが刀で斬りあう大喧嘩して、香耶さんが出ていっちゃったんだって」

「ホントに!?」

朗報だった。千鶴ちゃんが退室してから、あたしは嬉しさのあまりガッツポーズした。



あれから数日がたち、屯所で月神の姿を見ることはなくなった。
本当に出てったんだ。いい気味だわ。

「よっ、するりちゃん。まんじゅう買ってきたんだけど食うか?」

「屯所にいるだけじゃつまんねえだろ」

「ありがとうございます永倉さん、原田さん!! 一緒に食べましょ?」

みんなを魅了してきた笑顔で原田さんたちを見る。
すると原田さんたちは照れているのか、あわてた様子でまくし立てた。

「いや…俺はこのあと稽古があるから」

「あ、俺も!」

「悪いな」

そして彼らはあたしの頭をぽんぽんと撫でて行ってしまった。
なによぉ、このあたしがお願いしてるんだから、稽古くらいサボりなさいよね。

渡されたまんじゅうの包みを持って辺りを見回すと、ちょうど桶を持って中庭を歩く千鶴ちゃんを発見。
このさい千鶴ちゃんでもいっか。

「千鶴ちゃーん! おまんじゅう貰ったの。あたしと一緒に食べましょ?」

「え、で…でも私はさっき休憩したところですし、」

「いいのいいの! あたしが頼んでるんだから! ね、お茶いれてきてよ」

「……はぁ、わかりました」

うふふ。邪魔な月神はいなくなったし。新選組はもうあたしのものだわ。
あと、やり残したことといえば……。
思案していると、監察方の山崎さんが私たちに声をかけてきた。

「雪村君、副長の命だ。すぐに部屋へ」

「え、山崎さん?」

「ついでに母部君も」

ついでってなによ! あ、でも山崎さんって初めてちゃんと見たけど、やっぱりカッコいいわね。

「わ、わかりました! 行こう、するりちゃん」

「まっ、待ってよ。何があったの山崎さん!?」

「君が知る必要はない」

冷たく言って、山崎さんは背中をむけ走って行ってしまった。
わかった。これ以上あたしを他の男の目にさらしたくないってことね。あのひと、ツンデレだわ。




敵襲。
屯所が騒がしくなってきた。避難した千鶴ちゃんと月神の部屋は、戦場になっているらしい西本願寺の門よりかなり遠く、耳を澄ましてようやく喧騒が微かに聞こえる、といった程度だった。

あたしは攻略キャラにはまだ全員に会えていない。
この襲撃がもし鬼のものだったら、あたしは最後の攻略キャラに会えるかもしれない。

「あ……するりちゃん? ど、どこに、」

「ごめんね、千鶴ちゃん。あたし、行かなくちゃ」

「だっ駄目だよ危ないよ!」

「心配してくれてありがと。でもね、あたしこれ以上みんなに戦ってほしくないの。きっと誰かの命を犠牲にしなくても、話せば分かってくれるはずだもん!」

臆病な千鶴ちゃんにはできるはずないでしょ。でもあたしにならできるわ。
だって、あたしは神に選ばれた天女なんだもの!
あたしは、まだなにか言いたげな彼女を残して部屋を走り去った。


玄関から外に出ると、殺気立つ空気の中で沖田さんと一人の浪士が刃を合わせていた。
それを見て、あたしは心の底から歓喜した。

「だめぇぇえええ!!」

あたしが大声で止めると、その場にいた全員の動きが止まって、あたしに注目した。

「これ以上争っちゃだめよ。きっと話し合えばわかるはずだわ」

ねっ?
と首をかしげると、しんと静まり返った中で真っ先に動いたひと……風間さんが、あたしに近づいた。
わわっ、綺麗なひと! ……じゃなくって鬼。
あたしが感動してる間に、風間さんは手にしていた刀をあたしの咽元に突きつけて。

「この女はなんだ」

冷たい殺気とともに、そうはき捨てた。

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