器じゃなかった(side香耶)
月神香耶side
「あ……な、なんで……み、みんなっ助けてよぉ! 風間さんがぁ!」
するりちゃんに優しくするはずだった千景君が、するりちゃんに殺気を向けること。
「あたし風間さんに殺されちゃう」
するりちゃんを助けてくれるはずの隊士たちが、するりちゃんに見向きもしないこと。
「さ、斎藤さぁん、平助くぅん?」
「土方さん、原田さん、永倉さん、山崎さん」
「おき、たさぁん……」
するりちゃんのことを愛してくれるはずの幹部達が、するりちゃんに関心のかけらもないこと。
「あらら。気付いちゃったんだ?」
「つきが……み」
主人公だったはずのするりちゃん。
みんなに必要とされるはずだったするりちゃん。
崇拝されるはずだった。歴史を変えるはずだった。幸せになるはずだった。
何かを踏みつけて、誰かを陥れて、そんなことで世界を思い通りに出来るなら。
わたしが、とっくにやってるのに。
言ったはずだ。
するりちゃんの考えてることは、なんとなく分かるって。
あるいは私が、するりちゃんと同じ末路をたどったかもしれなかった。
日常の何気ない選択の末の結末は無限で。
「可哀想に」
「っ……」
かっとするりちゃんの顔が朱に染まった。怒りからだろう。
「なによっなによなによなによ! 月神は逆ハー狙いでしょ!? 悪女でしょ!? なのになんであたしがそこにいるのよぉ!」
己の選択の末の結末だと。
それが分からない君は、主人公の器じゃなかった、ということだ。
「嫌よ! モブなんてまっぴらごめんなのよ!!」
きっと彼女の思うキャストが全員そろったこの場で、ヒステリックに本性を晒すするりちゃんに、私が感じたのは嫌悪でも同情でもなく。
ネタバレした三流小説の読後感のような、ほんの少しの不愉快と無関心だった。
まぁ、面白かったと思えなくも無かったよ。