04
月神香耶side
朝倉氏による領国統治は比較的安定していた。一乗城山山頂に城を構え、そのふもとには城下町が形成され、京都での戦乱を逃れて公家や文化人が多く訪れ、華やかな文化が花開いた。
史実、1573年に織田信長によって滅ぼされるまでは。
この一乗谷中の朝倉館跡を私たちの未来では『一乗谷朝倉氏遺跡』と呼び、某携帯会社の白犬お父さんのふるさとという設定でにわかに活気に沸いていた。
まあ、このスタイリッシュ戦国アクションゲーム『戦国BASARA』の世界では史実のかぎりではないのでなんとも言えないけれど。
だってこんな、越南の都から遠く離れた名もない隠れ里に目ざとく手をつけにくるくらいだし。(今が西暦何年かも分からない。婆娑羅暦ってなに)
城奪っちゃおうかな……なんて邪まな考えに首を振って、私は目下、苦心して作り上げた自分たちの村を守るという目標に意識を向けた。
「フフフ、獣狩りの罠に大物が釣れましたよ」
と、血のにおいを漂わせながら不穏に笑う敬助君のあとをついて移動する私と半兵衛君。
たどり着いた先にあったのは、雑木林に転がる血濡れのむくろ数体と、裏山の大穴(私があけた)を利用した牢獄に押し込められた、おそらく侵入者の忍。
この時期なら織田か朝倉の者か。
……いや、最近城下で出回り始めた越前奉書(いわゆる和紙)や死ぬ気の炎などを利用して作る打ち刃物(バサラ屋に卸せた)の生産、他にも自然薬や衛生管理の知識など、先進的な技術の出所を探る間諜の可能性もある。
死ぬ気の炎や無双奥義などはおいそれと披露できるものではないけれど、医療系の知識は書物にしたり口伝で広めたりしてる。和紙の生産はそれらに必要だっただけだが。ここら辺だと江戸時代には今立あたりが和紙の一大産地になるはずだけど……うん。
ゆえに今のところ主な収入源は私が作る打ち刃物のみなのである。食住は自給自足できても、衣はムリだからね。たった五人しかいない村で住み始めて一年足らずじゃ出来ることに限度がある。やっぱある程度の現金(現物)収入は必要だ。
さて、牢獄の前で十文字槍を手に警戒する幸村君が、敬助君に連れられてやってきた私と半兵衛君を見て軽く目礼した。
「どーも。私が明月です」
生き残ってる忍くんに、とりあえず挨拶してみる。
兜で目深に目元を覆い隠した、赤髪の男。既視感がある。
生真面目そうなその男は、私の姿を見て驚いたように気配を揺らせた。