124
(行くだろぃ?えのすい!/立海all)

「やったー!テスト終わりー」
「開放感だねっ!!ふわふわパンケーキ食べにいこーよー」

10月末。
数日に渡るテストから解放されたゆめみとゆめこは軽やかな足取りで1号館から東門へと歩みを進める。
時刻はまだ14時半すぎ。今日は午後のテストが1つだけだったので、まだ時間にも余裕がある。

ゆめみが立海から海に続くグルメ通り通称「めしロード」の一画にあるパンケーキ屋の提案をすると、すかさずゆめこはスマホを出してホームページをチェックした。

「期間限定メニューはハロウィンパンケーキかマロンクリームパンケーキみたいよ」

ゆめこのスマホを覗き込む。
ハロウィンバージョンの可愛いパンケーキをみて「これがいい!」とゆめみは言った。

「でも何味かな?」
「いもでしょ」

ゆめみの素朴な疑問に即答したゆめこ。
その回答がパンプキンでもさつまいもでもなかったので、ゆめみは思わず「いもかよー」と大笑いしてしまった。

はしが転がるのも楽しい年頃の2人はそれをトリガーにケラケラと笑い合う。

ふざけながら歩いていたから、2号館の角を曲がった時にゆめみは同じく2号館の向こう側から歩いて来た人とぶつかってしまった。

「ごめんなさい」

ゆめみがとっさに謝って顔を上げると、そこにはここにはいるはずのない人が立っていた。

「まったく、おてんばがすぎるよ」

光の反射で青に見える綺麗な髪を揺らして、少し怒ったような顔を作っている。

「精市?」

ゆめみが名前を呼べば、にこ、と小さく微笑んだ。
制服姿に学校指定のマフラーを巻いていた。
テニスコートから北門に向けて歩いて来たようだ。

「どうしてここにいるの?」

ふと疑問が口から転がり出る。
隣に住む柳が今朝早くにJr選抜に向けて出発したのを寝ぼけながらも見送ったゆめみは、当然幸村も一緒だと思い込んでいた。

「今日までテスト休みだからね」

ゆめみの問いに部活に参加していないで帰宅しようしていることへの質問だと思った幸村はなんでもないようにそう言った。
が、すぐにまだ目を丸くしているゆめみに気がついて微笑む。
 
「俺は辞退したんだ」

その笑顔は少し寂しそうだった。
ギュッと心臓を掴まれたように痛かった。
ゆめみはまた「どうして」と言おうとして口を開いて、何も言わずに閉じた。

幸村が先週、駅構内で倒れたことを思い出したからだった。

テニスにあれだけ情熱を注いでいる幸村のことだ、Jr選抜に行けなかったショックは大きいだろう。何か気の利いたことを言いたくて口を開いた。でもまた何も言えずにまた口を閉じた。

言葉が見つからない。

幸村が倒れてから、毎日のようにそのことを考えていたにも関わらず、Jr選抜に行けなくなるだろうとは思い付きもしなかったのだ。

「ふふっ」

ぱくぱくと口を開け閉めするゆめみに、それをまじまじと見ていた幸村とゆめこが同時に吹き出した。
そんな2人を見て、ゆめみもうふふと笑った。
一度そんな笑いが始まるとなんだか止まらなくて、3人はくすくすと笑った。

「おーい!幸村くん!」
「幸村部長ー!」

呼ばれて顔を上げると、ブン太と赤也が1号館の方から手を振りながら走ってくるのが見えた。
その後ろをジャッカルが「ちょっと待てよ」と言いながら追いかけてくる。

「お、ゆめことゆめださんも一緒か!探す手間が省けただろい」

幸村の影からゆめみとゆめこが顔を出すと、ブン太は嬉しそうな笑顔で言った。
目がキラキラしていた、少年のようだった。

「行くだろい?えのすい!!」


丸井と赤也のお祭りのようなテンションに押されて、ゆめみ達はあっという間に水族館の前に立っていた。

わいのわいのとここまで来たのは丸井、赤也、ジャッカル、幸村、ゆめみ、ゆめこ、そして途中で捕まえた仁王と柳生だ。
真田は柳と一緒にJr選抜合宿に参加しているためいない。

「なぜ水族館なんですか?」

冷静なツッコミを入れたのは柳生である。

「えーっと、なんでだっけ?」

本気で首を傾げる丸井にジャッカルが「言い出しっぺはお前だろ、赤也」と赤也をこづいた。

「だってずるいじゃないっスか!真田副部長ばっかりいい思いして!俺も強い奴とテニスで勝負して、テストサボりたいっス!!」

正確に言えば真田と柳はテストを公欠で休んだ分、別室受験になるのだが、勘違いしている赤也は「だから俺たちはえのすいで楽しむっきゃないっしょ!」と熱弁した。

「ま、そういうわけだ」

「真田と柳に楽しんでる写真送りつけてやろうぜい」と続けた丸井に、赤也以外の皆は気付いた。
これはJr選抜に行けなかった幸村への、丸井なりの励ましであることを。
そして、それはここにいるメンバーの共通の気持ちだった。
幸村のことを心配していたゆめみも同じく、丸井の気遣いが嬉しかった。


「じゃあ早速、ここで集合写真撮ろうよ」

ゆめみは明るくそう言って、スマホを適度な高さの壁に立てかけた。

「みんな笑ってねー!10、9、8」

カウントダウンしながら、端っこに立とうとしたゆめみを、真ん中にいた幸村が引き寄せた。
ドキッとする。

「笑って」

幸村の男の子にしては少し高い声が耳元で聞こえて、ゆめみは必死にカメラを見て微笑んだ。

カシャ
カメラの無機質な音がして、次の瞬間から皆ははしゃぎながら入り口へと向かっていく。

「私は端っこでも良かったのに」

なんだか照れてゆめみは俯いたままそう言った。幸村は立てかけられたゆめみのスマホを回収して、そっと手の中に入れた。

「フフ真田と柳に羨ましがられたくなってね」

柔らかい声が聞こえて顔を上げると、幸村がいたずらっぽく笑っていた。
楽しそうな、年相応の、
精市のそんな笑顔は久しぶりに見た気がした。
そんな笑顔をずっと見ていたい、そう思う。

「幸村!ゆめださん!置いてかれちまうぜ」

ジャッカルの呼び掛けで顔を上げると、皆すでにチケットを購入して、2人を待っていた。
皆笑顔で、あたたかい。
ここでも幸村への配慮を感じられて、ゆめみは更に胸が熱くなった。
精市にも楽しんでほしい。

「精市、楽しもうね!」

ゆめみはくるりと回ってそう言った。
今、この瞬間だけは何もかも忘れて欲しい、ゆめみはそう思ったし、自分自身もそうしようと決めた。

「フフもちろんだよ」

幸村もみんなの想いに気付いてか、穏やかに頷いた。


水族館に入ると、えのすい名物の相模湾の海が出迎えてくれた。
1番大きな水槽の中に広がる壮大な海の世界。

そしてその美しい海の中を『8000匹のマイワシの大群』が泳ぐ姿は圧巻である。
ウロコが海の宝石のようにキラキラ、キラキラと輝いている。

ゆめみとゆめこは「わぁ」と言いながら水槽に駆け寄った。

「「美味しそー」」
「お腹すくだろい」
「うまそうなアジっスね!」

ゆめみ、ゆめこ、丸井、赤也の口からそんな言葉が漏れてジャッカルが「お前ら食うことばっかだな」とつっこみをいれた。

「全く、ムードも何もありませんね、幸村くん」

柳生は笑いながら幸村に同意を求めるが、幸村もくすくす笑った後「すまない、俺も美味しそうだと思ってしまったよ」と続けた。

「ふふふ、そうだと思った!精市はおさかな大好きだもんね!」

ゆめみが急にそのキラキラした瞳を幸村に向けて、幸村は少しドキッとした。
のも束の間、すぐにゆめこに「どーやって捕まえよっかー」とふざけて言った。

そんなふうにおどけて少しテンション高めのゆめみは、幸村と2人だけの時とは違う。
こんな表情もするのだな、と新鮮で。
そしてやっぱりそんなキミも可愛いと思う俺は重症だ。

「でもこんなに食べられないよね」
「いやいや瞬殺だろい」
「アジって生で食べられるんスか?」

ゆめこ、丸井、赤也も冗談を言う。赤也に関しては大まじめかもしれないが。
ゆめこの言葉に仁王はデジャブじゃな、と思った。実は2人は今年の3月にもここを訪れていたのだ。
しかしここでそれを言えばまた面倒なことになる。
2人だけの秘密にするのもいい、と赤也の頭を軽く小突きながら「マイワシぜよ」と言った。


その後もわいわい好き勝手話しながら進んでいくと、クラゲのゾーンに突入した。
青い薄暗い空間に、浮かぶ球状の水槽が美しい。

「綺麗」

ふらふらと水槽に近づいていくゆめみを、幸村は無意識に追いかけていた。

「不思議、踊ってるみたいね」

独り言のように呟いたゆめみに、幸村は「そうだね」と言葉を返す。
ゆめみが振り返った。その瞳に幸村が映る。
雰囲気が柔らかくなる。ゆめみが笑ったのだ。

「楽しいね、精市」

距離が近い、と思った。
ふわふわと笑うゆめみが可愛い、と思った。
薄暗い中水槽がたくさんあるため、メンバーは分散されたようで、今ここにはゆめみと自分しかいないように感じていた。

なんだろう、この気持ち。

ずっと忘れていたような気がした。
中国で、自分の卑怯さに落胆した時から?
いや、ゆめみが柳に告白されたら付き合うと言った時からだろうか?
ゆめみを失う恐怖で心がいっぱいだったから?

「楽しいよ」

心からの言葉だった。
今、自分は美咲だけじゃ無い、テニスさえも失いかけているのに、そんな風に思う自分が不思議たった。
自分の体への体の異変は自分が1番分かっていた。何かが起こっていることも。

それでも笑える、楽しいと思える。

「楽しいね、ゆめみ」

幸村がゆっくり繰り返すと、ゆめみは少し泣きそうな顔になって、
そして顔中で笑った。

「うん!」

そんな笑顔はずっと見ていられると思ったけど、この世に永遠は無い。


「ゆめみー!カフェでアイス食べよー」

ゆめこの明るい声で、次へと進むことになった。



「ポコポコクラゲのプチケーキ」
「アザラシソフト」
「お花のカメロンパン」
「ギョドッグ」
「ギョサンデー」
「しらすドッグ」
「あざらしパン」
「カワウソパン」
「そして、ホットドッグが8種類だろい」

ゆめみ、ゆめこ、丸井が順番にそう言って、その実物がテーブルの上にぎっしりと並べられていた。

その光景を見たジャッカルが「おいおい、夕食かよ」と突っ込んだものの、赤也の「これ全部食べていいんスか!?」という歓喜の声にかき消された。

ついには幸村までも「みんなで少しずつ食べるのは楽しそうだ」なんて言うものだから、柳生や仁王までもテーブルに座り、休憩タイムとなった。

念願のスイーツを食べながら「パーティーみたいだね」と笑うゆめみとゆめこ。

その後もカメとの触れ合いや、イルカショーなどを全員で全力で楽しんだ。
カフェであれだけ食べたにも関わらず、バーやカフェを見つけるたびに何かしら買って食べ歩きをした。

テストが終わった解放感と、ストッパーである真田と柳がいないことから、中学生らしいテンション高めの雰囲気が最後まで続いた。

ずっとこんな風にみんなで楽しい時間過ごしたいと思ったが、時間は前にしか進まない。
楽しい時間も、楽しい時間だからこそあっという間に感じて。
気がつけば夕暮れになっていた。

水族館を出た後、少し砂場で遊んでいたメンバーは日が沈みそうなのを見て慌てて帰路に着いた。


乗り換えた先の電車は帰宅時間と重なって程々に混んでいた。

乗り込むと座れないほどでは無かったが、全員で近くの席に座れるほどでも無かったため、メンバーは空いてる席に座ったり、立ったりと様々だ。
全員楽しさの余韻に浸っていた。

幸村は仁王と柳生と並んで座った。
ゆめみ、ゆめこ、丸井、ジャッカルは少し離れた場所に座って、今日食べたスイーツの話で盛り上がっている。
ゆめみの髪の毛にはゆめことお揃いの江ノ島水族館のマスコットキャラクターあわたんのヘアクリップがついており、幸村はかわいいなと密かに思った。

「では、私はここで失礼します。幸村くん、仁王くんまた明日」

最寄駅で降りようとする柳生に、幸村は「柳生、今日はありがとう」と声をかけた。
柳生は片手を上げて軽く挨拶して、電車を降りる。入れ替わりに小さい子連れの親子が乗り込んで来た。

すぐに立ち上がる幸村と仁王に、母親は恐縮して「大丈夫です」と言ったものの、幸村は「俺たちはすぐ降りますので」と座るのを促し、仁王と共にドアの横に立った。

幸村の最寄駅は、メンバーの中で1番遠いはずだ。そのことに気が付いた仁王は、にんまりと笑う。

「すぐ降りるんか?」

柳生の次に降りるのはゆめみ、ゆめこ、仁王である。
幸村はきょとん、とした。
今日は柳がいないのだから、ゆめみを家まで送るのは自分の役目だろう、そう思い込んでいた。
そしてそれを本人にまだ確認していないことにも気がついた。
途端に幸村の顔が赤みを帯びる。

そんな素直は反応を見て、仁王はクククと愉快そうに笑った。

「嫌がられるだろうか」

心配そうな顔をする幸村に、仁王は機嫌良く「降りてしまえば断られんじゃろ」と言った。
意外と肯定的な反応に、幸村は少し安心して「まぁ断られても着いていくだけだけどね」と続ける。

「ほお余裕だのう、そんなお前さんにプレゼントじゃ」

仁王がスマホに何かを送ったようだ。画面に目を移して、驚きで落としてしまいそうになった。
そこに映っていたのは、自分の写真だった。
幸村と、それからゆめみのツーショット写真。
幻想的なくらげをバックに微笑み合っている。
どう考えても恥ずかしすぎる。

幸村ははぁとため息を吐いた。

「仁王には負けるよ」

そう言いながらも嬉しそうだと仁王は思った。普段の幸村からは想像できない、ただの少年のような一面を仁王は興味深く見ていた。
幸村は画面をじっと見つめた後、顔を上げた。

「ありがとう」

その言葉にはいろんな意味が含まれている、そんな気がした。



「嬉しい!精市まだ時間あるの?」

仁王と一緒に降りた幸村に、ゆめみは少し目を丸くしたが、すぐにはしゃいで大喜びした。
どうやらまだ遊んでもらえると思ったらしい。

「良かったねゆめみ、お庭見てほしいって言ってたもんね」状況を理解したゆめこもそう言ってニヤリと笑った。

「うん!ずっと精市を招待したいって思ってたの!今はちょうどつるばらが見頃なのよ」

ゆめみはふわふわ笑って。
家まで送るだけのつもりだった幸村も、あまりに嬉しそうにそういうものだから、流されてしまう。

仁王とゆめこと別れた後は、2人は心ゆくまでガーデニングの話をした。
あっという間にゆめみの家に着いて、ゆめみの手作り感満載の庭を眺めながら、それでもずっとガーデニングの話ばかりした。
色とりどりのコスモスが咲いた話、幸村がおすすめした品種の花に虫がついてしまった話、アーチ状のつるばらがどんなに綺麗か、来年に向けてどんな球根を植えようか、など。
途切れず2人は話続けた。
そんな時間は楽しくて、愛おしくて。

気がつけば、真っ暗になっていた。

「ゆめみー、お庭にいるの?」

帰ってきたと思ったのに、なかなか家に入ってこない美咲に、母親が不思議そうに庭に出てきた。

幸村が慌てて立ち上がって挨拶をすると、母親はにっこり笑って「幸村くんね、ゆめみにいつもいろいろ教えてくれてありがとう」と言った。
ゆめみの母から幸村くんの分も夜ごはん作ったの、と言われてあれよあれよと流されるまま幸村はゆめみの家で夕食を共にした。
父親は夜勤だったので、3人での夕食。
学校での話やゆめみの昔話などを聞いて、楽しい時間を過ごした。

食事の後、幸村はゆめみの部屋にいた。
ゆめみがどうしても幸村に渡したいものがあると言ったためだ。
ゆめみは「ちょっと待っててね」と言って部屋から出てってしまったので、今は1人だ。

白い木製のベットに、ホワイトカントリー調の家具はゆめみらしい。
お花の良い香りがする。
幸村はそっと目を閉じた。

すごい1日だったな。

好きな子と水族館に行って、お家に来て、母親に挨拶して、夕食を一緒に食べて。

幸せな時間だった。

そう思った瞬間、幸村は見つけてしまった。
この部屋には似合わない黄色いテニスボール。
棚の上に飾られているそれは、忘れることがない、今年の夏の2連覇した時の優勝ボールだった。
俺が浮かれて会場でゆめみに送った優勝ボール。

楽しみにしていたJr選抜に参加出来なかったことを思い出した。
そして、水族館から今の今までそのことをすっかり忘れていたことにも気がついた。

あんなに参加出来なかったことが悔しくて悔しくて辛かったのに、その気持ちも和らいでいることにも。

「精市、あけて」

ドアの外から声がして、幸村がドアを開けると、ゆめみが立っていた。
両手にはアイスバーを持っている。

「ありがと」

呆気に取られたままの幸村を通り越して、ゆめみはソファーに座った。幸村もつられて隣にストンと座る。

ゆめみは2つのアイスバーを吟味して、より美味しそうなものを幸村の前に差し出した。

「先週ママと作ったの!可愛いでしょ」

差し出されたアイスバーには生のフルーツが入っていた。
バナナや葡萄、ブルーベリーにラズベリー。
たしかにインスタ映えしそうな出来映えだ。

幸村が「ありがとう」と受け取ると、ゆめみは少し悪い顔をして「ママには内緒ね」とウインクをする。
「夕食後にオヤツ食べるの禁止されているの」と付け加えたため、なんだか2人で悪いことをしているような気持ちになってワクワクした。

「美味しい」

素直な感想だった。
外は寒いが、ゆめみの部屋は暖房がかかっていて暖かい。ひんやりとしたアイスに癒された。

「うふふ、良かった!」

幸村の言葉にゆめみは少し照れたように嬉しそうに笑う。
少しの間、幸村はにこにこアイスを食べるゆめみを見つめていた。

「キミを見ていると、悩みを忘れるよ」

ゆめみはすぐに不思議そうな顔に変わる。
そして考えた後、「いい意味?わるい意味?」と上目遣いで聞かれたため、幸村はフフと笑った。

「もちろん、いい意味かな?」
「疑問系なの?」

ゆめみはまた少し考えた。
幸村の忘れたいこと、それはきっと体調の不安のことだろうと。
本当は聞きたかった。
あの後、体調はどうなのか、とかJr選抜を辞退しなければならないほどなのかとか、病院には行ったのか、とか。

でも、幸村が自ら話さないのに、聞くのはなんだか違う気がしたのだ。

「それは良かった」

ゆめみはふんわり笑って結論を出した。
良かった、と。
自分といることで、少しだけでも辛いことを忘れられるなら、それは良いことだと思ったのだ。
精市には笑っていて欲しい。

「私も精市といると楽しくて、世界が広がるよ」

ゆめみの笑顔はキラキラと輝いているようだ。俺には少し眩しすぎる。


この後すぐに幸村はゆめみの母に車で家まで送ってもらった。





(220521/小牧)
夢主1→125 夢主2→126

真田はぴば!

この日のキミの笑顔を俺は何度も思い出す。




未完成のエトワールtopへ

hangloose