※冨岡さんがストーカーっぽい






 玄関前で立ち尽くす不審な女、こと#name2#名前、こと私。いや、自分の家の玄関前なので少しの不審行動くらい許してほしい。なにせ私は今、大変に困っているのだ。

「また今日も…」

 私が持っているのはお気に入りのカステラ、が入っている箱。贈る用に包装され、ずっしりと重みを感じるそれは、誰かが悪戯に空箱を捨てていった訳ではなく、中身がきちんと入っているという事実を証明している。

 実は数日前から毎朝玄関前にカステラが置かれてある、という謎の現象が起こっていた。いや私も訳が分からない。鶴でも助けたのだろうか。いやいやまさか。
 それは私のお気に入りのお店のカステラであったし、きちんと包装もされているため誰かが私への贈り物として置いている、というのが分かる。だが毎日毎日置かれては流石に困る。いいところのお菓子なので贈っている方は値段も馬鹿にならないだろうし、そもそも顔も見せず物だけ置いて行くというのもどうなのだろうか。というか毎日女子にカステラを送るって。まだ家に10箱くらいあるのだが、いくら好きだと言ってもこの量を1人で食べるとか厳しいのだが。

 一体誰がこんな事を、と考えを巡らすが、心当たりは全くない。




「…という事が毎日起こっているんですよ。何が目的なんでしょうかね。一応しのぶに毒が入ってないか確認してもらったんですがその心配もないみたいで…」
「…そうか」

 馴染みの蕎麦屋さんで共に蕎麦を啜りながら、同期である冨岡義勇にそう相談する。鉄仮面である彼は相も変わらず、こんな話を聞いたって表情を動かす素振りは見せない。まぁ確かにこんな話をいきなり聞かされても…って感じだよね。ごめんね義勇さん。まぁお蕎麦は私の奢りだから許してほしい。

「…#name2#はそこのカステラが好きじゃなかったのか?」
「いや好きですよ!好きですけど!でも何も言わずに毎日カステラだけ置いていくって怖いじゃないですか!」
「…そういう、ものなのか」

 首を傾げる義勇さん。いや、そりゃあそうでしょう。目的が分からずただひたすらに毎日贈り物をされたら怖い。というか申し訳なくなってくる。

「まぁ毒も入ってないと分かりましたし、捨てるのも勿体ないので食べる事にしています。でも流石に多すぎるので義勇さんも貰ってくれませんか?」
「…あぁ」

 他人から貰ったものを人にあげるのは如何なものかとも思うが、まぁ腐らせてしまうよりは良いだろう。みんなで食べてみんな幸せになれば送り主も喜ぶ筈だ。うん。多分。

「カステラも大好きですけど、ずっと甘いものを食べてると流石に飽きてきますね。偶には塩気のある塩大福とか食べたくなりますよ〜」
「…そうか」

 そう言い放ち、私はご馳走様でした、と箸を置く。いつもより何となくお蕎麦を食べる速さが遅い義勇さんは何故か考え込んでいる様子だ。どうでもいい話をしすぎたのかな。それか義勇さんは真面目だから解決方法を考えてくれているとか。義勇さんは格好良いのに真面目で強くて凄いなぁ。義勇さんみたいに格好良い人が贈り物をしてくれているのなら惚れちゃうのにな、なんてあり得もしない事を心の中でひとりごちた。



 その次の日、有名店の塩大福が玄関前に置かれていた。ご丁寧に手紙付きで。どういう事なんだ。