ディアッカの友達なのだから
いい人に決まってる

ちょーーっと神経質で
ちょーーーーっと怒りん坊さんなだけ。

絶対的なディアッカへの信頼


Red Geranium


ご飯の前に急いでシャワーを浴びると
私はディアッカ、イザークを呼びに
寮の部屋へと向かった。

「ディアッカー、イザークー」

開けっ放しになった扉から
二人の部屋をのぞく。

「あらまァ・・・」

いつもは綺麗な2人の部屋が

大惨事。

その一言に尽きる。

「あらまァ、じゃねェよ。」

本を棚に戻しながら、ディアッカが顔だけをこちらに向けた。
本も、写真立ても、着替えも、枕も
床にちらばってしまっている。

ガラス枠の写真立てが無事なのは
せめてものイザークの気遣いだろうか。

「ユイ!!!
 今回負けたのは俺がアスランに劣っているからではない! 
 おまえのせいだ!」
「私?」

突然何を言い出すのか。
ベッドの上で腕を組んでいたイザークが、体を起こす。

今回の模擬テストの結果について
アスランもニコルも
私のフォローがよかったから
と言ってはくれたものの
やはり、あの二人の腕がいいのは事実で

特にアスランは誰よりも射撃センスがあるから

そう考えると
イザークが負けたのは
やっぱり・・・


「なんでユイなんだよ。」
「小一時間考えた結果だ!
 次は俺をアシストしろ!!」
「なんだよそれ!」

笑うディアッカを、イザークがにらみつける。

「真面目な話だ。
 貴様のアシスト能力には、目を見張るものがあった。」
「そう・・・かな?」

そう言われても・・やっぱりピンとこない。

私の戦闘スタイルは加点にはなんら影響しないのだ。

「おまえのアシスト能力があるから
 やつらも自由に動けた。
 この俺が認めてやってるんだ。自信をもて。」

褒められてるんだか
お説教されてるんだか、よくわからないけれど
「ありがとう。」

誰かを認める発言をするのが苦手なイザークがそう言ってくれているのだ。
ありがたく、受け取っておく。

知ってるよ。
ちょっと言い方がきつかったり、上からに聞こえるだけで
イザークは本当は優しい人なんだってこと。

「わかったから、早くおまえも片付けるの手伝えよ!」
「うるさい!」
「もー、私も手伝うから!」

散らばった着替え仕方なくたたむ。

「わりぃな。」

ディアッカは眉をハの字にしたまま笑った。





「こんなもんでいいでしょ!
 早くご飯行こう!おなかすいた!」


粗方片付いたところでお片付けを中断。
私の部屋じゃないし、気になるようなら
あとで一番神経質なイザークが自分でなんとかするでしょ。

「はいはい、わかったよ。」
扉に近い順に
イザーク、ディアッカが部屋の外へと出る。

「あ、待っ・・」

いつものように伸ばした手を
慌ててひっこめる。

「・・どうした?」
「なんでもない!
 今日のご飯なんだろうね!」

軽くスキップしながらイザークを追い越したとき
小さくため息が聞こえた気がした。






わかってた。
いつかは子どものときみたいに
手をつないで歩けなくなる日がくる、ってこと。

アスランみたいにディアッカに婚約者ができたり
婚約者じゃなくたって
お互い、恋人ができたり

ディアッカ、昔からモテるしね。


適当に見えて
じつは面倒見いいし。

わかってた。
わかってたのだ。


ただ、
こんなに急だとは思わなかっただけ。

ちょっと、心の準備が、足りなかっただけ。


行き場をなくしてしまった右手を
そっと左手で包んだ。



2019.04.21


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