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降下するシャトルの中で、今から降り立つ地球を見下ろす。

綺麗な青だな。

ふと掠める不安に
軍服の下、ディアッカにもらったネックレスの飾りをそっと押さえる。

ディアッカの髪と同じ、ゴールドのネックレス。

ディアッカが傍で見守ってくれているような、そんな気がした。


Red Geranium


「本日より配属になりました、ユイ・グローバルです。」
「お、君がそうか。」

レセップス艦内についた私は、隊長であるアンドリュー・バルトフェルドの部屋を訪れていた。

立ち込めるコーヒーの香りに少しくらっとするものの、敬礼を崩さないよう姿勢を正す。

「ふむ、なるほど。」
「隊長・・・?」

バルトフェルド隊長が、私の周りをぐるりと回る。

「だいたいはデータのイメージ通りだが、こんな可愛い子だとは予想外だったな。ハリスも教えてくれればよいものを。」
「ハリス教官・・ですか?」

突如発せられた見知った名前。
思わず聞き返すと、隊長はきょとんとした顔をした。

「あれ?聞いてない?ハリスが君のシュミレーションデータを送ってくれたんだ。」
「・・・あぁ!!」

いつだったか、ニコルやアスランと自主練中の記憶がよみがえる。
たしかハリス教官がデータを見せたい人がいる、と言っていたっけ。

それがまさかバルトフェルド隊長だったなんて。

「他にもいろいろデータを見せてもらった。いろいろと。」
「あはは・・・」
「ははは。」

いろいろ、って・・なんだろうか。

ハリス教かーーーん・・・

「まぁよろしく頼むよ。今日はもう陽もくれる。ゆっくり休んでくれ。」
「はい。」

ぽんぽん、と肩に置かれた手は、大きくて温かかった。










自由にしていていい、と言われたものの、少ない荷物を解いてしまえばもうすることもない。

「外、出てみようかな。」

地球の夜は、どんなふうだろう。

たしかニコルが”夕焼け”が綺麗なはずだ、と言っていたっけ。


『夕焼けがどんなだったか、次会うとき教えてくださいね。』

最後に会った時、ニコルは私にそう言って笑顔を見せた。

今頃ニコルとアスランもクルーゼ隊長に挨拶しているところだろうか。

イザークとディアッカは、一日ずらして、明日合流するらしい。

二人が一日ずらすことになったのは、きっとディアッカが私を見送るためだ。

『ずっと、つけてくれてんだな。』
『うん。』

シャトル入り口まで送ってくれたディアッカの手が、服の隙間から除いたネックレスのチェーンに触れた。

『なんかあったら、連絡してこいよ。』
『うん。』
『なんかなくても、連絡してこい。』
『うん。』

そんなに頻繁に、連絡が取れないことは、わかってる。

『ほら、泣くな。』
『・・・泣いてないもん』

溜まった涙がこぼれないよう、唇を噛みしめて耐える。

『・・ったく。』

呆れたように笑いながら、ディアッカの指が、こぼれる寸前の涙をぬぐった。

いつでも私を見守ってくれるディアッカの、この呆れたように笑う顔。

ずっと、好きだった。

仕方ねぇな、っていつでも私を守ってくれた。

『ユイ、こいつが俺の代わりにずっと近くにいるから』
『ディアッカ・・・』

ディアッカがネックレスのヘッドがあるであろう位置を、軽くノックする。

私の首元に置かれたままの握られた拳を、私は両手で包んだ。

『・・・行ってきます』
『おう。』

ディアッカが思い出すのが、いつでも笑顔であるように

私は精一杯の笑顔で手を振った。







「う・・わぁー・・・・・!!」

レセップスから外に出て、周りを見渡すと、空は綺麗な色に染まっていた。

「これが・・・地球の夕焼け・・・・」

まだ一日しか経っていないのに、もうすでにディアッカが恋しい。

ディアッカにも見せたいな
私の瞳と同じ赤と、ディアッカの瞳と同じ紫が混ざり合ったような
この綺麗な空。

「ディアッカ・・・・」

会いたい

口から出そうになった言葉を

私はぐっと飲み込んだ。







2019.05.25


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