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久々に画面越しに見る幼馴染に元気してたか、と問いかけたら

毎回一言目はそれだね、と笑われた。



Red Geranium



配属されてから数週間。

ユイのいない日々は、忙しなく過ぎて行った。

先輩のミゲルに、配属の挨拶は全員そろってくるもんだろ、と怒られたり

イザークがチェスでアスランに負けたせいで、部屋がまた大荒れしたり。

ユイがいなくても、毎日は過ぎていくんだな、なんて、当たり前のことを感じたりして。

「今日はどこへ行く気だ。」
「日用品の買い足し。おまえだってそろそろ足りないものとかあんじゃねェの?」

久々の休暇。イザークと街へ出る。
イザークは特に用事はないみたいだけど、やっぱずっと中にいてもな。

「まぁそれなりにな。」

整髪料に、シャンプーに・・・歯磨き粉もきれかけてたっけか?
適当に入った店で、いつもの使いなれたものを探す。

「あいつとは連絡をとっているのか?」

言いながらイザークは歯ブラシを手に取る。
やっぱり極上毛だよな、おまえは。

「配属されてからは4回くらい?そんな頻繁に通信できる環境でもねぇしな。」
「そうか。ユイの寂しがってる顔が浮かぶ。」

最後に画面越しで話をしたのは3週間前だったか。
そのときも、ちゃんとあいつの首元には俺のやったネックレスがあった。
ほんと『こいつが俺の代わりにずっと近くにいるから』とか、俺もこっぱずかしいこと言ったもんだわ。

会計を終え、イザークと店をでる。
本屋、お気に入りのブランド、靴屋を巡ったところで、腹の虫が鳴いた。

「昼飯でも食うか。」
「そうだな。」

飲食店の立ち並ぶ道へと、足を向ける。
何食うかな。

ピザ、ラーメン、パスタ

向こうに見える看板を順々に目で追う。
ここなんでもあるな。

イザークはなんでもよさそうだし、今日は俺が店決めるか。

動かした視線の先で、ふとカフェの看板が目についた。

実家の近所にもあった、同じ系列の店。
ユイに半分以上食われたいちごタルトを思い出す。
ソフィアさんの作った、いちご、好きだったな。

『ディアッカくん、いつもごめんね。ユイの面倒みてくれてありがとう』

面倒なんか、みてなかった。

ついてくるユイがうざったくて、何回置いていったか。
何回、泣かせたか。

それでもいつでも俺の後をついてきた。

引っ張りまわされたことも、あったっけな。

『ほんとユイはディアッカくんが大好きね』
『うん!』

幼いユイの笑顔が浮かんだ。

「あ、」

点滅する信号。

「急ぐぞ、ユイ。」

反射的に隣の掌をつかんで走る。

「おまえっ」
「あっ」

信号の真ん中で、思わず足が止まる。

「わるい・・はは」

ユイのものより一回り以上大きな掌は、俺が手を離すと重力に従って下へと落ちた。

やめろ、イザーク
そんな目で俺を見るな。

「・・・寂しがってるのはあいつよりおまえだったか。」
「ちょ・・っ、待てよイザーク」
「信号が変わる。」

すたすたと歩いていくイザークを、駆け足で追いかけた。



寂しくないわけ・・ねェだろうが。









***あとがき***

久々の更新なのに短めですね。
すみません。
短いし、なくても大丈夫な話だし、飛ばそうか悩んだんですが、ヒロインちゃんと間違えてイザークの手を握っちゃったディアッカをどうしても書きたくて・・・笑

2019.06.21


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