――彼女は変わらないな、とリンハルトは思う。
立場上仕方のないことではあるが、ベレスは毎日朝から夜中まで忙しそうに動き回っている。
戦争が終わったとはいえ未だフォドラは混乱も大きく、フォドラを救った英雄であるベレスにもやらねばならない仕事は多い。
近隣の村に出た賊の討伐に出かける、なんて言い出したときには流石にそれくらい他の兵士にでも任せればいいのに、と思ったがベレスらしいとも感じる。
「たまには休んだほうがいいですよ」
「そういうわけにはいかない。私にはまだやらなければならない仕事が溜まっているし……」
「……それで貴女が倒れたら元も子もないでしょ」
リンハルトは大袈裟に溜息をついてみせる。この数日、ベレスは明らかに睡眠時間が少ないし顔色も少し悪い。仮に彼女の身に何かあればフォドラは再び大混乱に陥る可能性もある。
何よりベレスが体調を崩すのは嫌だし心配になる、と。意外と頑固なベレスがなかなか折れてくれないのは容易く想像出来てしまうのだが。
「貴女はたまにサボるくらいでいいんですよ……ということで昼寝しに行きましょう。良い昼寝スポットを見つけたんです」
「……リンハルトらしいな」
「僕ですからね」
人がそんな簡単に変わるわけないじゃないですか、なんて。ベレスは出会ったばかりの頃は「無」という言葉が似合うほど無表情だったが最近ではあの頃より随分と表情豊かになったので変わる人は変わるのだと思うけれど。
半ば強引にベレスの手を引いて歩き出す。こうして連れ出してしまえば彼女は嫌でも休む時間が作れるし、リンハルト自身も彼女と過ごす時間を確保できる。……幸せな瞬間だと思う。
「少しだけ、だからね」
「分かってますって」
お互いに、共に在ることを選んだのだから時々わがままを言うくらいは許してほしい。